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第26話
物理の授業は、理科棟の4階にある物理教室であったのだが、ボーっとしていてペンケースを忘れた事に教室の手前まで戻って気づいた。
面倒くささに悪態をつきながら、昼食時間でひと気のなくなった理科棟に戻り、物理教室の引き戸をガラッと開けた。
「わわわっ」
慌てふためく声が聞こえ、ガタガタと椅子が鳴った。
誰か、急に僕が入ってきたことに動揺しているようだ。
僕は僕で、もうすでに灯りが消されて薄暗くなっていた教室に人がいたことに驚いていた。
「ど、どうした」
動揺を隠しきれない様子で声をかけて来たのは、クラスメートの男子生徒だった。
「いや、ペンケースを忘れて…」
そう言って彼を見ると、背後に誰かを隠していた。
顔は見えなかったが確実に男子生徒で、腕を後ろに回して庇うように隠している様子が二人の関係を物語っていた。
「ご、ごめん!」
最近、そう言うことに敏感な僕は瞬時に状況を理解し、慌てて謝ると教室を飛び出した。
自分の教室に戻り、席に着いて心を鎮めていると、彼も帰って来た。
微かに顔を紅潮させて僕の席にやって来ると、僕のペンケースを机に置いた。
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