32 / 39
第32話
都会の私大の方が、受験科目は少ないしネームバリューもあると思うのだが、地元に残ることを最優先に考えてくれているのは僕のせいなのか、とうぬぼれて先輩に表向きは申し訳なさそうに、本音は心から嬉しそうにそう言うと、
「バカ、お前のためばっかじゃねえよ」
と、少し怒ったような口調で言った。
僕はやはりうぬぼれが過ぎたとしゅんとしていると、先輩が僕の頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でた。
「お前のためとか、ホントにそうだったら重すぎんじゃん」
軽く突き放しては、それ以上の勢いで引き戻してくれる先輩に大いに翻弄されながら、僕はもしもいつか先輩と別れる時が来たら、もう生きていけないんじゃないかと思い、重いのは僕の方だと自戒した。
ともだちにシェアしよう!