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第33話
すぐに来年度に向けてまた練習が始まるのだが、大きな大会が終わるとしばらくはゆったりしている。
いつの間にか寒くなり、街はクリスマスムードになっていた。
クリスマスイブ、学校は冬休みに入り、恋人のいる部員たちの希望で部活も休みになった。
僕は、勉強の息抜きにと先輩に誘われて、映画を見に行った。
洋画のスパイアクションもので、とても面白かった。館内は8割がた埋まり、アクションもののせいか友人らしい男子の二人連れも結構いて、人目を気にしなくてよかった。
それでも、館内が暗くなり映画が始まると隣からそっと手が伸びてきて、僕の手に触れてきた時にはドキンと心臓が飛びはねた。
緊張しているのか先輩の指は冷たくなっていて、僕は指を絡ませ、包みこむように握った。
クリスマスイブにデート出来て泣くほど嬉しくて、実際鼻をすすっていたら、先輩が申し訳なさそうに言った。
「あの俳優のファンだった?悪かったよ、ぶっ殺されたとき、俺笑っちゃって」
映画館を出ると、街をしばらく歩いた。クリスマスの装飾を施された街は見違えるように華やいでいて、道行く人を高揚させていた。
いろんな店を冷やかしながら、僕たちは訳もなく笑い、ふざけあった。
ただの友達のように。
どこかに感情が辿り着くのを怖がっているように。
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