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第34話
それでもだんだん口数が少なくなり、駅に着く頃には二人とも何も喋らなくなっていた。
電車に乗り込み並んで座ってもお互い何も言わず、じっと窓の外を眺めていた。
電車を降りても黙って歩いていたが、駅前の公園をあと少しで抜けようというところで、とうとう先輩が立ち止まってしまった。
「…先輩?」
先輩は僕の方に向き直ると、僕の服の袖口を握って言った。
「お、お前が俺を抱く気になれないんならそれでも構わない。抱きしめて、キスしてくれるだけでいいから、俺を振るな」
僕は、今にも泣きそうになってこちらを見つめている先輩の手を握ると、駆け出した。
僕の家にたどり着く頃には二人とも息を切らして、冬だというのに汗ばんでいた。
鍵を開けるのももどかしく、もつれ込むように家に入ると、玄関ドアに先輩を押し付けて、唇を重ねた。先輩は腕を背中に回すのも忘れて僕のなすがままに口を預けていたが、口の中をかき回していた僕の舌から唾液を舐め取り飲み下すと、唇を離してため息をついた。そして、こぼれ落ちそうなほど涙を溜めた目で僕を見上げて聞いた。
「いいのか?」
僕はコクリとうなづくと、先輩を部屋へと連れていった。
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