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漕ぎ手のヴァン14
ヴァンは楼主の言葉を聞きながら、ふと春雨のことを思った。
ーー春雨は"小鳥"だろうか?
どうも「小鳥」と表現するにはあまりに毒々しいように思う。仮に取小鳥だったとしても、何か強烈な毒を持っている小鳥に違いない。
ヴァンは思わず、隣に立っていた漕ぎ手に尋ねた。
「ねえ、毒のある鳥っているのかな?」
「はあ?毒のある鳥?なんのことだよ」
呆れたように笑った声は思ったよりも大きく、ロブが気づいて声をかけてきた。
「おーい、そこ。何か質問か?」
「え、あ、いや……」
大きな笑い声をあげた張本人は慌てて首を横に振った。それを見たロブはヴァンに尋ねる。
「ヴァン。お前は何か質問があるのか?」
「いえ、ちょっと……その、ふと思っただけなんです」
「何を?」
ヴァンは恥ずかしそうに仲間たちを見てから、絞り出すように答えた。
「その……毒のある鳥っているのかなって」
それを聞いたロブは呆気にとられてパチパチと瞬きしてから、思わず楼主を見下ろした。
「楼主様、ご存知ですか?毒のある鳥」
楼主はわざとらしく手を顎にあて、首をかしげる。
「そうじゃのう……毒のある鳥、か。虫や魚の類であれば毒を持つものは珍しくないが、鳥となるとのう……」
深く考え込む楼主とロブの姿に、ヴァンはすっかり慌ててしまった
「あ、いえ、その、なんというかふと思っただけなので!」
すると、楼主は手にしていた扇で口元を隠し愉快げに笑い、ロブに手を引かれてヴァンの方にやってきた。そして、ヴァンの前に立つと、背伸びをしてヴァンの手を握った。
「よぅし、ヴァンや。お前が船で客を迎えに行っている間、私が毒のある鳥について調べておいてやろう」
「あ、ありがとうございます!でも楼主様、本当にちょっと思いついただけなので、その……あまり真剣に探してもらわなくても大丈夫ですからね……?」
「なぁに、私に任せておけ。さ、漕ぎ手たちよ、船出の時間だ!私は鳥について調べなくてはいけないからな、見送りはここまでとしよう」
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