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第14話「逆転」

「力抜いててね」 「ん、、久遠」 「ん?」 十分に慣らしてほぐした穴に藤崎が自分のそれをあてがうと、義人はピクンと肩を揺らして彼へ振り返った。 「くっついて、、」 「え?寂しくなった?どうして」 聞きながらも、ゴムを被ったそれをズウ、と義人の穴にねじ込み、沈め始める。 ゴムの入っていた小袋は、封が切られた状態で浴室の床に落ちていた。 「ぁあッ」 指とは比べ物にならない太さのそれが押し入ってくる感覚は、息がしづらく、先程まで感じていた切なさが解けていくようで不思議でもある。 義人は何だか急に寂しくなったのだ。 それは特に理由があった訳ではなく、ただ少しずつ変化しながらも寄り添って生きてくれる存在である藤崎がいてくれる事が嬉しくて、少し切なくて、寂しいと思ってしまったのだ。 「あ、ぁ」 肉壁を広げて、藤崎の性器は義人の身体の奥までゆっくりと侵入してきた。 (あったかい) 穴に埋まり、彼の体温に性器が包まれていく感覚に、藤崎は「ハア」と一度大きく息をついた。 先程までも散々セックスしていたのに、義人の中はまた新鮮な気持ちの良い感触で、堪らない。 「義人。寂しくないよ、俺がいるよ」 先程まで逆の立場にいたくせに、藤崎は義人の腰を優しく掴み、小さく中を突きながらそう言った。 「ん、、はあ、んっ」 「んー?」 「あ、ぅん、んっ、、あ、こす、て、久遠、擦って、ぇ」 「あんまり煽らないで」 泣いている声だ。 優しくゆっくり動く藤崎の腰が与えてくる快感はもどかしくて焦ったく、そんな事でも切なくなるらしい義人はスンスンと泣きながら自分で腰を揺らし、藤崎のそれが奥に届くように急かす。 「義人、コラ。止まって」 「あっあんっ、あっ」 「ダメだよ。ゆっくりしたい、聞いて」 自ら腰を振って自分が感じるポイントまで性器を誘導してくる様は腰が疼く程可愛くていやらしく、どうしようもないのだが、それでも今は久々に触れ合えてじっくり時間をかけられるこの行為を、藤崎は2人でゆっくりと楽しみたかった。 「やだ、あっ、もっと、奥、んんぅ、届かないぃ、久遠っ、奥、奥までっ」 「ッ、ん、締めないで、義人、イかないで、」 「あ、あぁああッ、イクっ、イクぅ、久遠、イっていい?久遠、あんっ、久遠、あっ」 「ダメだ」 「アッあっ、うっ、、」 あまりにも中をほぐされすぎて、義人は微かで焦ったい藤崎の腰の動きでもすぐにイキそうになっていた。 けれど彼に「ダメ」と言われた瞬間、我慢するように脚と尻に力を入れ、ギュウッと穴を締め、しごいていた自分の肉棒を両手で痛いくらいに握り締めて迫って来ていた射精感を我慢し、遠のかせていく。 「ん、」 藤崎も動きを止めて、義人に上半身を起こさせ、繋がったまま壁に近付かせた。 「壁は冷たいから、俺の手によっかかって」 そんなものいらないのに。 自分の扱いが丁寧過ぎる藤崎の行動に、一瞬言い返そうともしたが、あまりにも怠くて従う事にした。 後ろから回された手の手のひらが冷たい壁につけられたのを見て、義人はその手の甲に頬を押し付けて寄りかかって休む。 「はあ、はあ、、ん、、」 「義人、寂しいの?」 ゆさ、と藤崎が腰を揺する。 「んあっ」 腰の奥が快感で重くなっていく。 「義人」 「はあっ、ぁ、はあっ、、ん、くっついて」 「うん」 顎を肩に乗せ、細い腰を掴んでいた手を腹に回して彼の背中にピッタリくっついて抱きしめると、藤崎は義人の呼吸のタイミングに自分の息を合わせた。 それは、何だかとても心地が良い。 「あっつ、、」 「くっついてって言ったの義人だよ。ん?」 寄りかかっていた手から頬を離して、義人は藤崎の壁についた手に舌を這わせる。 指の間をくすぐって浮き出た骨をなぞり、ちゅ、ちゅ、と手の甲にキスをしていった。 「何してるの」 「ん?早く動けアピール」 「ダメだよ。今動いたらすぐイクだろ」 「イキたい」 「ゆっくりしたい。久々だから」 「久々じゃない。さっき3回もした」 キッと横目で睨まれた。 「んー、、」 「、、ベッドでもう1回するから」 「ほんと?」 「1時には寝る」 「分かった」 「あっ!」 藤崎の執念に折れた義人が甘やかした途端、彼は嬉しそうに笑って返事をして、すぐにグン、と義人に挿れたままの性器で奥をついた。 「はっ、あっ、あっ、、!」 息ができない。 良いところをゴリッと、えぐるように強く擦られたのだ。 義人はあまりにも気持ち良くて目の前がチカチカして、ヒュッと変な音を立てながら必死に酸素を吸い込む。 「休まないで」 「あ、ダメ、んおっ、ぁあっ、あんんッ!」 パンッ パンッ パンッ 再び腰を掴まれ、今度は1番奥までガンガンと突き上げられる義人。 浴室の中は彼の甘ったるい喘ぎ声がよく響いて、藤崎の興奮を更に煽っていくばかりだ。 「やだあッ、あ"ッ!イクッ!イクッ!!」 「可愛い、んっ、義人、可愛いよ。ねえ、ちゃんと言って」 「イかせて、久遠、イかせてッ!!」 「ちゃんと言って。聞きたい」 下から突き上げられる感覚が堪らない。 求められているんだと嫌でも感じてしまう。 穴の入り口で藤崎の肉棒を締め付けながら、義人はすぐそこまで来てしまった射精感にだらしなく口を開けた。 「イッ、イって、いい?く、おん、ん、うっ」 その言葉が聞こえた瞬間に、藤崎はちゅ、と義人の肩にキスを落とした。 「言えたね。いいよ」 「あ、ぅあッ!アッ!!」 速度も、角度も、強さも堪らない。 自分の身体を隅々まで知っている藤崎だからこそ与えてくれる快感が、その全てが愛しくて、義人はぼろぼろと涙をこぼして絶頂を迎えた。 「ダメ、ダメ、それ、アッ、ぁ、あ、イク、イクッイクッ、久遠、あっ、、あぁああッ!!」 必死に壁にしがみ付くと、全身に力を入れ、その白い壁に向かってビュウゥッと射精をする。 壁に精液のぶつかる音が聞こえた。 「ぁ、ん、あ、気持ち、ぁ、あ」 「ん、可愛過ぎる、好きだよ、義人」 「ん、ぁ、今ダメ、あんっ」 藤崎はイッている最中の義人の中を何度か突き上げ、ギュッと締まっている穴の入り口の感覚に堪えられず、ゴムの中に射精した。

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