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第31話「イク」

「ハアッはあっ、はふ、ふぅ、、ん、」 ゴクッと唾を飲む音が呼吸音に混ざった。 義人は肩で息をしながら、イキ終わった身体から力を抜き、トン、と藤崎の肩に額を押し付ける。 乳首でイク、と言う感覚がまだ身体に馴染んでおらず、どうにもむず痒さが残っていた。 一方で、藤崎の方は「ん?」と彼に違和感を感じていた。 「ん、あれ?精子出なかったの?玉の中、空んなってる?」 「あ、触るなっ、バカ!今イったばっか、!」 一層声を上げていたので絶頂したのは分かったが、義人の性器からは我慢汁がだらだらと大量に流れ出ているだけで、射精をしてはいない。 藤崎は彼の下着を引き下ろし、ぷるんと立ち上がった形の綺麗なそれを出させると、肉棒の下にある重たくなった玉の袋に手を伸ばし、下から持ち上げるように掴んでやわやわと揉んだ。 「んー、いっぱい入ってるっぽいけど」 「やめろ、だめ、!」 袋全部を包み込みながら、玉と玉の間にむにむにと藤崎の指が沈む。 たまに手のひらの上に乗せられてたぽたぽと揺すられるのが恥ずかしくて、義人は力の入らない身体を何とか藤崎から離そうともがき始めた。 しかし、未だに腰をガッチリとホールドされていて身動きが取れない。 「ちゃんと出さないと心配だよ。精子どっかにつまっちゃってない?」 「バカッ!やめろ、久遠っ、揉むのやだっ!!」 「うーん、、出そっか」 「ぇ、、えっ?」 バシンッバシンッと藤崎の背中を叩いたり胸を殴ったりしていたのだがびくともしない。 そして結局、低い声が耳元で聞こえたその瞬間、ゾワ、と悪寒のようなものが義人の背中を這い上がってくる。 この感覚が彼には堪らなく、もがく為に浮かせていた腰がストンと落ちて藤崎の太ももの上に座り直してしまった。 「出そっか、精子」 「い、いやだ」 ニッと笑う、整い切った美しい、意地の悪い顔が見えた。 「え、うわッ!」 もぞもぞと自分を膝に乗せたまま藤崎がベッドの上で身体を回転させていき、義人の身体が下に落ちない角度まで来ると、彼の身体を背中から思い切りベッドの上へと押し倒し、そこに覆い被さる。 「っ、なに、」 「スッキリしようね、義人」 「スッキリって、あ、」 シュルシュル、と性器だけ出して脱ぎかけだったパンツを藤崎が彼の脚から引き抜いていき、そしてそのまま身体を下へ移動させると、そそり立った義人の性器を利き手の左手で優しく包み込んだ。 「や、」 咄嗟に抵抗しようとしたけれど無駄で、藤崎は義人のそれの先端に、ねろり、と舌を這わせてしまった。 「あ、んっ」 「口に出して。全部飲むから」 「ぁ、いやだ、やめ、ろっ、ああっ」 徐々に徐々に藤崎の柔らかくて温かい口内に性器が飲み込まれていく。 「ぁあっ、あっ」 止めなければと思うのに、ぬめりのある柔らかい口内の壁にそれが覆われていく感覚は堪らなく気持ちがよく、少し舌を動かされるだけでビクンッと腰が跳ねる。 久々のフェラチオにおっかなびっくりしながらも、快感に負けて力の入らなくなった手を伸ばし、義人は藤崎の頭に触れた。 「や、だあ、や、やぁ、ぁあんっ」 「黙ってちゃんと感じて。」とでも言いたいのか、藤崎は義人のその手を掴み返して力を入れて離さないまま、義人の性器の根元を左手で支えながら、ぐぽっぐぽっと小さく音を立てて吸い上げる。 頭を上下して口内から出し入れしつつ、唇に力を入れて、舌を裏筋にくっつけるように咥えると、義人は無意識に気持ちの良さに喜んで腰を揺らした。 「久遠、フェラやだ、頼むから、ぁあっ!」 手が離され解放されるのかと思った瞬間、グン、と下半身を持ち上げられ、腰の下に藤崎の膝が入ってくる。 義人は彼の肩に脚をかけさせられ、藤崎は義人の脚の間に頭をねじ込んで、尚もぐっぽぐっぽと粘着質な水音を響かせながらフェラチオを続けた。 「やだっ、やっ、ぁんっ、んっ、こんな体勢、いやだっ」 好きにして、と性器を差し出しているような格好だ。 そして何より、藤崎の視点からだと性器も後ろの穴も丸見えで、指を突っ込みたければいつでも入れられる程、脚を開かされている。 「舐めないで、久遠、嫌だっ、やだ、久遠のフェラはやだっ」 「嘘ばっか、ん、、ん、、好きでしょ、これ」 藤崎は義人の性器を舐め上げる様を彼に見せつけながら、唾液をたっぷりとそれに絡ませた。 てらてらと光沢に包まれた自分のそれが藤崎の口元にあるのがもどかしく、義人は顔を真っ赤にしながら泣きそうな表情に変わっていく。 恥ずかしい。 でも触られたい。 フェラされたい。 けれど、それを口にするのも恥ずかしい。 抵抗しなければ藤崎から「淫乱」と思われそうで、それが嫌で、清楚ぶって首を横に振った。 「いやだっ、あっ、すぐイかされる、からっ、はあんっ」 ぢゅうっ、と強く亀頭を吸い上げられ、ビックン!と大きく腰が震える。 「大丈夫。すぐイッていいよ。何回イッても俺が満足するまでフェラするから」 「や、だっ、あ、ほじらないで、ぁ、ああっ、気持ちい、気持ちいいっ、はあっ、やだ、んぁ、あっ」 鬼頭の先端、尿道の入り口をしつこく舌先でほじくり回され、義人は快感に耐え切れず、とうとう「気持ちいい」とよがってしまった。 甘ったるいすえた性の匂いが寝室に充満している。 性器を弄ばれるたびに腰を劈いていく快感が徐々に絶頂へと義人の意識を押し上げるようだった。 「ゆっくりにするね。可愛いよ。ちんこピクピクしてるのも、感じてるのも全部可愛い。ちゃんと見せて」 義人が素直に声を上げ始めたのを見計らって、藤崎はわざとゆっくりと性器を舐った。 やっとスイッチが入ったなあ、とセックスに前向きになった義人の目を見下ろし、愛しそうに微笑む。 「あ、気持ちいい、ん、あったかい、ぁ、あ、久遠」 義人も義人で、もう物欲しそうな表情を隠しはしなかった。 「んー?」 「手、んんっ、手繋いで、寂しかった、から」 力の入らなくなった右手が、震えながら持ち上がって藤崎に伸ばされる。 「ふふ。俺も繋ぎたい。これでいい?」 藤崎は自分の左手を伸ばして彼の指先に触れ、優しく指を絡ませる。 右手でひっくり返ってしまっていた性器の根本を支え直すと、またべろん、と鬼頭を舐め上げて時間をかけて愛で始める。 「ん、、ぁ、あ、」 「義人、ゆっくり感じて。焦んなくていいから、俺とセックスして」 「ぁ、ん、気持ち、いい、、ん、ぁあ、あ」 「恥ずかしがらないで。今日は2人でまったりセックスしよ」 「ん、、わか、った、あ、気持ちいい、よ」 泣きそうな顔のままだけれど、義人も義人で久々に触れ合う藤崎とゆっくりセックスがしたかった。 愛し合っているのだと感じたくて、きゅ、と絡めた右手に力を込める。 「どうされるのがいい?」 「あ、、あ、さきっぽ、ほじられるの、好き」 「ん。教えてくれてありがとう。可愛い」 義人がいいポイントを教えた瞬間、藤崎はまた執拗に尿道の入り口を攻め、肉棒の根本から亀頭の下までをゆっくりと右手で扱いていく。 「ぁ、あ、久遠、あ、、い、イきそ、あ、」 義人はそれを時間をかけて感じたかったのだが、速度に関係なく高まってしまった射精感が我慢できそうになく、藤崎に小さな声で報告した。 「出したい?止める?」 「1回、やめて、まだ、、ん、まだ、イキたくない、ん、ん」 このスローなフェラチオがやたらと藤崎からの愛を感じられて、終わるのが嫌で、首を横に振る。 「分かった。やめるね、大丈夫そう?」 藤崎は義人の手を握り返しながらフェラチオをピタリとやめ、イきそうな感覚に耐えている義人を見下ろして目を細めた。 赤らめた顔はこちらには向いておらず、ベッドの横のカーテンのかかった窓を見つめている。 細く瞼を開けたり、辛そうに閉じたりを繰り返していた。 明るい部屋の中だとそんな義人の細かい表情の変化も読み取れて、どうにも、射精させたいな、と思ってしまった。 彼はずっと、目を閉じて、また薄く開いて、迫って来ている射精感を振り払おうと必死そうだ。 「義人、?」 けれど次の瞬間、ギュウッと藤崎の左手が握り込まれ、手の甲に義人の爪が食い込んだ。 「あ、だめ、ごめん、ダメだ、あっ、イク、イク、ぅ」 「ん、?ダメだった?出す?」 「ぁあんっ、ご、ごめんっ、ダメ、あっ、や、やだ、何で、ああっ、アッ!」 絶頂しそうな感覚が拭いされず、藤崎が手を止めてから数秒それと闘ったのち、義人は呆気なく脚をブルブルと震わせて、勢いのない射精を始めてしまった。 「ぁあっ、んっ、はあっ、はあっ、あ、で、出た、?うそ、何で、」 「やめるの遅すぎたね。甘イキしちゃった?」 「ん、んっ、」 ダラダラと性器の先端から下っ腹に垂れ、ヘソにたまるドロドロした白い少量の液体を、義人は悲しそうに見ている。 泣きそうな顔だ。 「スッキリできなかったでしょ?可哀想。ごめんね、もっと早く止めれば良かった」 「ん、ごめん、イッちゃった、ぁ、久遠、良いって言ってないのに、いっ、ちゃった」 「んん、泣かないで。いいんだよ、大丈夫だから」 「いいよ」と言ってもらえていなかった事も、「イっていい?」と聞けなかった事も悲しくなり、義人はぼろぼろと泣き出していた。 それを藤崎が大丈夫、と言って慰めるのだけれど、下手な責任感の強さと義務感で、教え込まれている事が叶えられなかった義人はぐずぐずな表情をしている。 「ん、やだ、久遠に、良いって言って欲しかった、のに、いいって、きく前に、出しちゃった、」 「っ、、義人、煽らないで」 「久遠、に、っん、いいって、」 ズズっとたまに鼻をすする姿は子供のようで、けれど見た目は立派に成人している男で、藤崎はいてもたっていもいられず、義人の脚をベッドにゆっくりと下ろすとすぐに彼の身体に覆い被さり、息を奪うようにキスをして、口内に舌をねじ込んだ。 「ん、ふっ、んっんっ、、んんっ、」 「バカ。何で煽るの、ゆっくりしたいんだよ」 「久遠、ごめんね、」 縋るような手が、藤崎の肩を引っ掻いて背中に回される。 「いっぱいイっていいよ。今日はたくさんするから」 「ん、ごめん、」 「謝んな。もうそれやめて。あー、もう俺がダメだ、ごめん、挿れるね」 「久遠、ンッ、む、、んっ」 ちゅ、とキスをして藤崎が枕元に置いてあったゼリーのボトルに手を伸ばす。 キュポッと、聞き慣れたいやらしい音がした。

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