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第32話「満す」

ぶりゅっ、と中身を手のひらに出すと、ゼリーのボトルは義人の腰の横あたりに置かれ、やがてコテン、とシーツに倒れた。 蜂蜜色のボトルの中身がたゆん、と揺れる。 手の上で潤滑ゼリーを温めている間、藤崎はボトルと同じように枕元に置いてある白い箱から正方形の小さくて薄いゴムの袋を取り出し、自分の座っている位置の隣に置いた。 「触るよ」 「ん、、」 まだ少しむず痒いような、ふわふわしているような身体に藤崎の手が触れる。 イった後だからか義人の体温の方が高く、藤崎はそれを感じながら指先に纏わせたとろみのあるゼリーを彼のヒクつく穴に塗りつけた。 「っ、」 「冷たかった?」 「だいじょぶ、ん、、久々だから、緊張する」 「嫌じゃない?」 「いや、じゃない」 義人は自分の脚を曲げて膝を腹につけながら、脚の間から見える藤崎を見つめている。 先程、どうしても彼の顔が見たくて枕を引き寄せ、頭の下に入れて角度をつけた。 藤崎は右手で義人の太ももを押さえ、左手の中指で執拗に彼の後ろの穴のヒダを撫でている。 「ん、ふ、、久遠、早くそれ挿れて」 彼が言っている「それ」とは、藤崎のボクサーパンツを押し上げている勃起した性器の事だ。 「もう少し慣らしてからな」 「ンッ、、まだ?」 「急かすね、今日」 クツクツと藤崎が笑うが、義人は「そうだろうか?」と首を傾げながら、穴の入り口を触られる感覚に恍惚とした表情を浮かべ、たまに大きく息を吐き出していた。 締め切った部屋の中で、クーラーがゴオゴオと風を吐き出している。 湯冷めしないようにしつつも、湯上がりの暑さで汗がベタつくのも嫌で、温度は22℃に設定してしまっていた。 「そんなに俺のちんこ欲しいの?」 藤崎はふざけて義人の足首を掴み、顔の高さまで持ち上げると足の裏をべろんと舐め上げる。 突然のくすぐったさに一瞬変な息の飲み方をして咽せ、しばらく咳をしてから落ち着いた義人は色んな意味で涙目になりながら、自分の足の裏を舐めている男を睨んだ。 「っん、いっ、、欲しいッ」 (あ、ヤバ、可愛い) 憎たらしい藤崎の顔を睨み付けながら、義人はギャン!と吠えるようにそう言って足を自分の方に引き、彼に足首を離させた。 「可愛い」 「ぅあっ!」 言われた瞬間に藤崎は困ったように笑い、くすぐっていた義人の穴の中心にツプン、と指を埋め込む。 久々の異物感に肩を跳ねさせ、義人は口元を手で覆って藤崎を見つめた。 「ぁ、ぁ、」 「顔隠すのやめて。見えないと寂しい」 「ん、は、んっ」 「痛くない?」 「大丈夫、だから、、ぁ、ん、」 「奥までゆっくり挿れるね」 「ぁ、あ、大丈夫、だから、あ、久遠、早く」 「ダメ。ゆっくり」 途中途中で潤滑ゼリーを足しながら、藤崎は本当にゆっくりと指を奥へと進めていく。 絶対に傷付けたくないと言う優しさも気遣いも嬉しいのだが、軽く絶頂しただけでむず痒さの残っている義人としてはどうしても焦らされているように思えてしまった。 早く奥まで差し込んで、いつものいいところを擦ってほしくて、やわやわと無意識に腰を動かしている。 「義人、誘うのやめて」 「早くしろ、ん、、んん、ん、はあ、」 「声我慢してる?指でも結構キテるんだ」 「も、イクの、嫌だ、、久遠ので、イク、ぅ、」 中指が第二関節まで埋まると、義人は息を止めて身体を捩る。 先程の甘イキが本当に良くなかったようで、むず痒さもあるのと同時に、強い刺激が走るとまたすぐにイキそうな感覚もしているのだ。 「だめ、だ、動かすな、イ、ク、から、ぁ、はあ、はあっ」 「ダメそう?」 上擦った彼の声を聞いて、藤崎は指を止める。 「ん、抜いて、やだ、、久遠の、はあ、んっ、久遠の挿れて、お願い」 「んん、分かった。ゆっくり抜くから我慢して」 「ぁ、あ、ん」 根本まで入れていた指をゆっくり、刺激しないように引き抜く。 義人は大きく深呼吸をしていた。 3日間のブランクだけでこんな事になるとはお互いに思っておらず、義人からすれば敏感になり過ぎている身体が少しやっかいで、藤崎からすれば嬉しさもありつつ、急かしてくる義人を乱暴に襲わないよう堪えるのに必死でもあった。 ボクサーパンツを脱いだ藤崎のそれはぶるん、と揺れる程パンパンに膨れ上がって勃起していた。 脚の間から彼がするするとそれにゴムを被せていく様を眺めつつ、義人は息を整え、そしてトクン、トクン、とうるさく鼓動する心臓の音を頭の奥の方で聞いていた。 (ダメだ、、絶対、挿れた瞬間にイク) うるさい胸を撫で下ろしながら、何にしろ一回イってスッキリしてしまいたいとも思った。 自分でそうしている気はないのに、後ろの穴は藤崎を見つめているとヒクンッと勝手に動いてしまい、中も筋肉が動いて締まったり緩んだりを繰り返している。 「ん、、」 「ん?どした?」 声を漏らした義人に、ゴムをつけ終わった藤崎が覆い被さって上から彼を見下ろした。 また顔が赤くなっているのは体調でも悪いのかと気にかかったが、切なそうに細められた目がこちらを向くとそうではないのだと理解した。 「イ、きそう、、」 「んん、、可愛い。そんなに敏感?今日」 「さっきのが残ってて、この辺の奥が、ムズムズする」 そう言って、彼は自分の下っ腹を撫でて見せる。 「ここ?」 「ん、」 藤崎もそこを優しく撫でる。 義人の肩がピク、と動いた。 「久遠、あの、」 「ん?」 また泣きそうな表情だ。 どうにもそれを見せられると、藤崎の中の理性が大きく揺らぐ。 「イって、いい、、?」 精一杯の声が聞こえて、藤崎が穏やかに笑った。 「いいよ」 左手で自分の性器を掴み、ゼリーを塗りたくった義人の穴の入り口に当て、ヒダを先端で上下に擦る。 「ぁ、あんっ、んっ」 「これだけで気持ちいい?最高に可愛いね」 「ん、挿れて、んっ、あっ、久遠、ちょうだい」 「んん、ワガママなのも最高」 藤崎は欲しい欲しいとうるさくなった義人の口を塞ぎ舌を絡めてから、宛てがったそれをグッと彼の中へと押し入れた。 「ん、んふ、んっ、、んんッ!」 ズプ、と太い先端が義人の後ろの穴に入る。 「ん、んんっんっ、、ぁ、あ、久遠、ダメ、奥だめ、イク」 「ちょうだいって言ったじゃん」 「んひっ、んっ、あ、ああっ」 気遣いつつも1番焦らされていた藤崎の理性ももうぐずぐずに崩れており、すんなり自分の性器を飲み込んでいく穴のいやらしさにつられてどんどん奥へと押し進んでいく。 温かくて柔らかい肉壁は、久々の愛しい義人の中なのだと実感できた。 「義人?3日ぶりのセックスだよ」 「んぁ、あっ」 唇を離してしまってから、義人はだらしなく開けた口が閉じられず、延々と嬌声を漏らしている。 自分の中に、奥を目指して入ってきた藤崎の肉棒の熱さやら久しぶりの圧迫感で寂しかった感覚が満たされていくと同時に、もう少しで届いてしまうイイトコロをそれが擦ってしまったらと考えると堪らなく切なくなった。 (イっちゃう、どうしよう、イっちゃう、絶対イク、ぁ、ダメだ、来た、来ちゃった、) 「ぁ、あ、あ、あ、アッ!」 亀頭がゴリ、と腹の裏のそこを擦る。 「ぁあ、あ、、だめ、イク、イクッ!」 「待って、動くから」 「アッ!!ダメ、動くな、イクッ、あ、イクうっ、久遠、イク、だめ、だめ、ぁあっ、あっ!」 どうせイクなら、と義人が1番好きな速度で腰を動かし、義人が1番好きな角度でそこを突き上げる。 堪らなくなった義人もそれに合わせて激しく腰を振ると、パンッパンッと肌のぶつかる音と、クーラーの音が大きく部屋に響いた。 「イクイクイクッ、あ、、あぁああッ!」 今度は勢いよく、ビュウウッ!と義人の性器が射精をした。 「ダメ、イってるのに、あんッ、久遠、だ、めっダメだってば、ああっ!」 義人の胸元まで飛んだ精液が、首に流れ落ちたり脇に落ちたりしている。 白い身体は尚も揺れていて、「ダメ」と何度言っても藤崎は止まってくれない。 「ごめん、無理、気持ちいい、っん」 「あっあっあっ!やめて、イク、また、いっ、イク、ぁあっ、イクッ!」 「ん、キツい、、はあ、義人、可愛い。義人。いっぱいイって、見てるから、いっぱいイって」 「ダメ、久遠だめッ、それダメッ、んぁ、あ、ダメダメダメえッ!!」 義人の射精が終わっても、藤崎は穴の締め付けの気持ち良さに負けて夢中になって腰を振っている。 見下ろした先の義人はボロボロと涙を流して、自分の腰を押さえつけている藤崎の手を掴み、精一杯の力を込めた。 「イ、きそ、、ん、義人、好きだ、義人ッ」 「ンンッ、だめ、ダメッ、あ、あぁあッ!!」 パンッ!!と奥まで突かれた瞬間、いっそう強く義人のいいところと藤崎の性器が擦れ、彼の身体を挟んだまま義人の脚が閉じて力が入り、筋肉が浮き出る。 「ッん、く、、んッ!」 精液のようなもっと透明なものが弾けるように性器の先端から噴き出て、義人は脚をガクガクさせながら必死に呼吸を繰り返す。 彼の何度目かの絶頂でまた穴の入り口の締め付けが強くなると、とうとう藤崎もゴムの中に大量の精液を射精した。 「ん、はぁ、」 「ぁ、はあっ、はあっ、んっ、、ハアッはあっ」 疲れ切った藤崎が義人の顔の横に手をついて、繋がったまま彼を見下ろして息をする。 閉じていた義人の瞼が開いて視線が絡まると、息はまだ落ち着いていなかったけれど、愛しくなってまたキスをした。

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