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第130話「格別」
藤崎は義人にこの体勢をさせるのが好きだった。
彼が嫌がるの知っていてやっている。
恥じらう義人は藤崎の大好物であり、また、その顔を正面から見下ろせるこの体位は格別だ。
尻の穴の皺の寄った窄みも、勃起した雄々しい性器も、ぷっくりした乳首も全部一気に眺められるのも良い。
「ぁ、んっ、あっ!」
義人は窄まった穴の周りの皺を丁寧に舐め上げていく藤崎の顔をチラリと眺めた。
恐ろしいのは舐めながらも藤崎がこちらを見ている事だ。
思わず視線を逸らして窓にかかったカーテンのヒダを見つめる。
藤崎は義人がどこを舐めたら嫌がるのか、恥ずかしがるのかをジッと顔を見つめて観察しているのだ。
(変態、本当に変態だ。顔は良いのに、!)
「んひっ、!」
硬くなった舌先が皺の中心をこじ開けようとうねり始め、驚いて素っ頓狂な声が漏れてしまった。
「な、なにっ、」
せっかくシャワーを浴びたのに、段々と身体は汗をかき始めている。
驚いた顔のまま藤崎の方を向くと、深い茶色の瞳がぐゆりと揺れて見えた。
「余計なこと考えてない?」
「いや別に、こ、怖っ、何も考えてないよ」
「へえ、そっか」
「あっ、やめ、ンッ、ぁ、だめ、えっ」
たっぷりとした唾液が穴の入り口を濡らしていく。
そうすると滑りが良くなって、藤崎の舌がぬるぬると這い回り始める。
義人は気持ち良くなって自分からゆるゆると腰を揺らし、藤崎の舌が気持ちの良いところを掠めるようにわざと動く。
この体勢だとどうしても腹筋を使うしかなくて、中々に筋トレのような状態だ。
「あ、あ、」と小さく声を漏らし、夢中になって腰を揺らす彼を見下ろして藤崎は満足そうに微笑んだ。
(エロい)
舌先に力を入れたまま、義人の動きに合わせて気持ち良がる場所を見つけると、そこに強く舌を当てた。
「ぁ、あ、だめ、イク、久遠、あ、あ、」
「イクの?」
「んぁ、あ、乳首、久遠、乳首触って」
細められた切なそうな視線が藤崎へと送られるが、彼はゆったりと微笑んだまま、穴から舌を離さずに答える。
「届かないよ」
義人の腰を抱き込んで腹に回された手と、もう片方は太ももの裏を掴んでいて藤崎の両の手は空きがない。
「あ、触って、ぇ、あっ、」
「自分で触れる?俺、義人のちんぽしこしこするから」
そう言いながら腹に回した左手で逆さまになった義人の性器を優しく掴み、親指と中指で輪っかを作り、ゆっくりと扱き始める。
「ん、んっ、ああ、んっ」
義人は藤崎を見つめながらシーツを掴んでいた手を離し、そろりと自分の胸元に伸ばして、ピンと立ったその突起をくにくにと捏ねる。
自分でやっているくせに、面白いくらいに気持ちが良くて、余計に腰が揺れた。
「んん、可愛い。好きだよ」
「あっ、ぅんっ!んっ久遠、?」
「ん?」
たまにヂュパッと強く穴を吸われると、馬鹿みたいな声が漏れた。
「久遠のちんぽは、?」
「穴ほぐさないと痛いよ。もう少し待って」
「あ、フェラは?んっんっ、しちゃ、ダメ?」
「ダメ。後で。今俺が義人の穴舐めてるから」
「分かった、ンッ、んんっ、あっうっ」
カクカクと腰が揺れ始め、絶頂が近いのだなと見ていても良く分かる。
両手で自分の乳首をいじくる義人の姿はいやらしく、藤崎の欲望を昂らせていくばかりだ。
ゴクン、と唾を飲む音が部屋に響く。
それから、荒い息遣いが聞こえていて、段々と大きくゆっくりと、そして深い呼吸に変わっていっている。
「久遠、イク、ごめん、い、イクっ」
「いいよ。可愛い。今日はたくさん出そうね」
絶頂の寸前で、義人はだらしなくカパッと口を開けてしまった。
「うぁん、んっ、あ、出る、あ、ぅんんっ、んんん"ッ!!」
堪えきれなかった喘ぎ声が漏れると、藤崎は左手の動きを早め、義人に大量の射精を促した。
けれど、腰や脚が痙攣したようにビクビクと震えただけで声に伴うような射精はなく、イキ終わった義人が足りない酸素をかき集めるように呼吸してもほんの一滴も精液は出なかった。
「ハアッハアッ、出ない、んっ、イッたのに、ンッ」
「甘イキした?ここ挿れないとダメか。指入れるよ」
「ンアッ!?」
藤崎が舐め続けていた穴から口を離し、かわりにツプンと指を入れてくる。
あまりにも突然だった事で義人はビクンッと大きく身体を揺らしたが、穴はすんなりと藤崎の指を受け入れていた。
「は、うっ、入った、?」
涙目になった義人と目が合う。
だらしなく開いた口は一生懸命呼吸していて、藤崎はそれを見ているだけでも股間が熱くなって仕方がない。
どんなときでも、藤崎を昂らせるのは常に義人だけだ。
「入ったよ。でも1本が限界かな。ゼリー使うね」
あらかじめ用意してあるそれを枕元から取ったのは義人で、震える手で藤崎にボトルを渡す。
「ンッ、あ、冷たい、、んっ!」
温めはしたものの、身体が熱くてどうしたってゼリーは冷たく感じられた。
ぶちゅっと音がして暫く藤崎の手で温められたそれが穴に塗りたくられると、キュッと無意識に尻に力を入れてしまう。
藤崎は優しくトン、トン、と義人の穴を叩いてから、ゼリーが絡められた指を窄まった穴の入り口にあてがい、再度中へと押し入れていく。
「ぅんんッ」
「ん、痛かった?」
滑りの良くなった指はどんどん奥まで入っていき、第二関節も埋まった。
「だ、大丈夫、アッ、はあっ、はあっ、あ」
久しぶりの圧迫感が、何故か愛しく思えた。
「ここ?」
「ぁあんっ!」
義人の良さそうなとろんとした表情を見下ろして安心した藤崎がクンッと軽く中の指を曲げると、ちょうど、義人が良がるポイントに中指の腹が当たった。
そしてその瞬間、びゅっと勢い良く義人の性器が射精し、彼のヘソの辺りに白濁したとろみのある液体が飛んでしまった。
「あ、あ、ごめん、久遠っ!」
(可愛い、、)
「いいよ」と言われていないのに射精してしまった罪悪感と呆気なく達してしまった羞恥心で顔を真っ赤にしながら、義人は黒い瞳からぽろぽろと涙をこぼして、自分でも驚きながら藤崎を見上げてそう言った。
一方で、藤崎の方は一向に構わないと言う顔で優しく彼に微笑みかける。
実際問題、こんな軽い愛撫で達してしまった義人が可愛くて仕方なく、何より股間が痛い。
「大丈夫だよ。ごめんね、いきなりだったから仕方ないよ。腰下げようか。精液舐めさせて」
「んっ、ハア、、な、舐めなくて良い」
「舐める」
義人の腰をシーツの上におろし、身体の下から枕を抜いてまた義人の頭の上に戻す。
そんな風に動いていても、左手の中指は義人の穴の中に埋まったままだった。
だから、少しでも指が動くと義人はいちいち反応せざるを得なくなっていて、「んっふっ」と小さく熱い吐息が漏れている。
「久遠、もお、挿れて、穴の中あっつい」
「まっへ」
ベロン、と開いた脚の間にいる藤崎は義人に覆い被さり、腹の上の白い液体を舌で舐め取っている。
無駄にすまいと執拗に舐め取ってくるあたり、義人からすると若干狂気じみて見えた。
(、、まあでも、俺もこうするだろうし)
飲むなと言われても、口の中に出されれば絶対飲み込む。
引きつつも、藤崎の行動への理解もあった。
「ゴム着けるから待ってね」
「ん、、?」
身体を起こした藤崎は枕元に手を伸ばし、そこに置きっぱなしになっているコンドームの入った箱へ指をかける。
しかしそれを下から伸びてきた手が止めた。
「いらないから、挿れろ、」
「んー、やめよ?お腹痛くなるよ?」
常々義人の身体を想っている藤崎は、彼の発言に少し困ったような顔をして義人を見下ろした。
「今日だけ、お願い。今日だけだから、、ゴムなしで久遠のちんぽ感じたい、お願い」
「んー、、」
潤んだ瞳で見上げられるとどうにも強く出られない。
図っているな、とは分かるのだが、そこまで必死にゴム無しでの性行為を主張してくるのも珍しい事だった。
「中で射精して、、お願い」
ここ最近の一連の騒動の罪悪感から来るお願い、ではないのだろう。
義人自身がただ単に、今日は何も隔てずに藤崎と繋がりたいと思っているのだ。
真っ黒な瞳を見つめ返して、藤崎はフッと力を抜いて笑う。
(寂しかったもんなあ、お互い)
ここにいる、大丈夫。
そんな安心感が欲しいからこその義人の発言だ。
「、、本当に今日だけだよ」
「んっ、ありがと、久遠」
「調子良いなあ、今日」
ふにゃふにゃの笑顔を見せられて堪らなくなった彼は止められた手を箱から離し、真上から義人を見下ろしてキスを落としていく。
唇を塞いで舌を絡め合いながら、ボクサーパンツをずり下ろしてぶるんと勃ち上がったそれを外に出し、義人の穴の入り口に先端を宛てがった。
「んっ」
ぬるぬると、ゼリーのおかげでよく滑る。
「挿れるから、力抜いて」
「ん、んっ!」
耳元でする藤崎の優しい声が愛しい。
目をつぶって彼の頸に手を回し、藤崎のあれが入ってくるのに身構える。
「挿れるよ」
「ぁ、ぁああっ!」
グウウッ、と奥へ、穴をこじ開けながら藤崎の性器が侵入してくると、空気が押し出されるように堪らず声が漏れていく。
「ンッ、クる、ンンッ!」
「はあっ、、ん、、ごめ、待って。あんまり締めないで、義人」
「んんん、ごめん、ンッ、あ、中に、久遠の、クる、んっ」
先端が入っただけだと言うのに、義人の身体はぶるぶると震えている。
強張って、下手に力が入っていたのが抜けたらしい。
「コラ、ねえ、聞いて。落ち着いて、義人」
しかし、穴の締め付けはキツいままだ。
「んっんっ、ぁ、ダメ、だめっ、あっ、久遠とセックス、、セックスしてる、」
「義人、待って、絞んないで、んッ」
久しぶりのセックスは隔てるものがないせいもあって甘ったるく、それでいていつも以上に刺激が強い。
義人の穴に性器を締められ、下肢に走る快感の電流に流石の藤崎も我慢が出来ず、全て押し込む前に腰が動いてしまった。
「だめ、んあっ、ダメそこ、そこおっ」
タンッタンッとゆっくりした浅めのピストンが止められない。
「んっ久遠、ぁ、あっ、お、っきく、なった、ンッ!」
「煽らないで、お願いだから。痛くしたくないんだよ」
苦しげな声に目を開けると、こちら見下ろす藤崎の余裕のない顔が見えた。
「ご、め、、ンッ、好き、あっ」
「待って、義人、全部挿れるから」
「ンッンッ」
ああ、ダメだ。
腰が止まらない。
藤崎は奥歯を噛み締めて、乱暴になりそうな自分の動きを何とか制そうともがくのだが、義人の方がゆるゆると腰を揺らし始めていた。
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