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第131話「単純」
「んんんっ!」
久しぶりの圧迫感と、とてつもない安心感。
こんなときだと言うのに、あるいは今だからか。
義人は穴の奥まで侵入した藤崎の肉棒の熱さや硬さを目を閉じて受け入れ、感じながら、「女の子もセックスのときはこんな風に満たされるのかな」と頭の片隅の冷静な部分で考えていた。
「ちょっとタイム」
「ンッ」
「このまま、ね?」
久しぶりのセックスと言う事は藤崎の興奮した頭でも抜けておらず、彼はまた義人を気遣い、荒く奥を突き上げたい衝動を堪えて見下ろした先の義人の頬をやんわりと撫でる。
この距離感も、お互いの肌を一糸纏わぬ姿で重ねるのも、随分久しぶりのように思えてならない。
実際、2人の想いはそれだけ遠ざかってしまっていたのだ。
遠ざからなければ義人が手首を切ったりなんてしなかっただろう。
「ん、、ん、久遠」
「大丈夫だよ。焦らないで」
「突き上げて欲しい」と視線で訴えてくる義人に笑いかけ、コツン、と額を合わせて彼は静かにそう言った。
ふぅ、ふぅ、と吐き出す息が混ざって、お互いの息を吸うように呼吸している。
熱くて嫌になりそうだけれど、この熱が愛しくて堪らなさもある。
ぽた、と藤崎の背中から脇腹をつたって流れてきた汗の粒が、義人の腹の上に落ちた。
「はあ、ん、久遠、好きだよ」
「ッ、、あのさ、煽るなって言ってるでしょ。ホントこういうとき多いよそう言うの」
「んん、、」
煽っているわけではないが、お互い生きていると実感して胸がいっぱいになった義人の言葉に、藤崎は苦笑いを浮かべる。
欲望のままに無茶苦茶に抱きたいと言う衝動を懸命に堪えて、義人の穴が自分のそれの圧迫感に慣れるまで待っていると言うのに逆撫でするような発言をされては困るのだ。
我慢が効かなくなってしまう。
「可愛過ぎ。落ち着かせて」
「ごめん」
「ん」
「、、ちゅーは?」
「だからあ」
「ちゅーだけだから、動かないから」
「ッ、、もう、」
頸を撫でて誘ってくる義人に仕方なく応え、藤崎は額を離して鼻先を擦り、そのまま義人の唇にキスを落とした。
「ん、」
柔らかい。
温かい。
ありきたりな感想しか出ないけれど、生きている義人を感じられるのが嬉しかった。
あの冷たい肌ではないと、心底安心する。
「ん、ぅ、、ん、んっ」
舌の絡まるぐちゃぐちゃと響く粘着質な音が鼓膜を揺らして2人の欲情を煽っていく。
義人は夢中になって舌を突き出し、藤崎に吸われて身体を震えさせ、一度射精を終えた性器を再び勃起させて反り返らせている。
「く、んっ、ふ、くお、ンッ」
「ん、、動くよ」
「ん、来て、ンッ、あっ!」
唇を離した瞬間にグンッと下から強く突き上げられ、思わず声を上げた。
あまりにも甘ったるく気持ちの良い痺れが腰の奥からぐずぐずになって身体に広がっていく感覚に身震いして、パチパチと瞬きを繰り返して藤崎を見上げる。
「あっ、んっ、あっあっ」
突き上げられるたびに身体が揺れる。
ぷるんぷるんと勃起した性器もそれに合わせて揺れる。
「ん、はあ、、ん、」
「久遠っ、だ、大丈夫、だから、ぁ」
「ん、?」
「大丈夫っ、だから、んぅっ、もっと、突いて、ッ」
飲み込み切れない唾液が義人の口の端から溢れ、ぽた、とシーツに落ちてしみていく。
「ゲホッゲホッ、っん、、き、もち、ンッ」
「義人」
「大丈夫、いるから、アッ、はんっ」
「義人、やめて、、大切にしたい」
数日間抱けなかった身体。
それを目の前にしてまだ理性を保つ藤崎を甘やかしたくて、義人は腕を伸ばして彼の頬を両手で優しく包み込む。
少し汗ばんだ、自分よりも小さい手、細い指。
それらの感触を味わうように、藤崎は浅く呼吸しながらスリ、と頬を押し付けた。
「んっ、おいで、大丈夫、だから」
「ッ、、ごめん」
「ンアッあっあっ!」
「おいで」と言われた瞬間に、緊張やら我慢やらの糸がブツンと藤崎の頭の中で切れてしまい、荒っぽく義人の中に自分のそれを打ちつけ始める。
パンッパンッとうるさいくらいの肌がぶつかり合う音が部屋に響き、義人の嬌声も一層強く大きくなっていく。
「あ、うっ、久遠、好きッ、好きだよ、ンッあっあっ!」
ゴリッゴリッと「イイトコロ」にばかり藤崎の性器の先端が抉るように当たっている。
「義人、ッ、可愛い、好きだよ、義人ッ」
「あッ、っく、イク、イクうッ」
「締まるね、可愛い。ンッ、義人、綺麗だよ、義人、義人ッ」
「あんッ、あっあっあっ!」
藤崎が腰を打ちつける音が激しくなると、義人は両手でシーツを掴み、反動で身体がベッドの上の方へ動いていかないように力を入れた。
ベッドのスプリングすら悲鳴をあげている。
「だ、め、だめッ!あ、だめ、イク、久遠、イクッ、イッていい?ンッンッ!」
「んん、いいよ、ッ、はあ、」
熱い吐息が混ざっていく。
藤崎の突き上げるタイミングに合わせて腰を振りながら、義人は右手で自分の性器を掴み、忙しく扱き始める。
そうして暫くすると射精感がいっぱいいっぱいのところまで上り詰めて、呆気なく声を上げて達してしまった。
「あぁあッ、アッ、あッ!!」
「ンッ、!」
上を向かせた性器の先端から溢れるようにピュッピュッと精液が流れ、やがて義人の右手や下腹を白い液体が汚した。
久々のセックスで感度が上がり、藤崎の突き上げの気持ち良さと彼との行為なのだと言う意識で満たされ、義人は涙を流しながら射精を終える。
けれど藤崎の方はまだ激しく義人の中で動いていて、正直、休む暇がなかった。
「あんっ、あっ」
「ごめんね、も、少しだから、ハアッハアッ」
「アッ、んっ、あ、ダメ、お尻変な、感じッ、あ、あッ、イク、イクイクイクッ、イクッ」
「ん、義人、義人ッ」
「久遠っ、くお、あ、ンンンッ!!」
達した義人の穴の入り口がグンと締まり、藤崎はそこを出し入れする気持ちよさに任せて腰を振り、中に欲望を流し込んだ。
「あっ、ぁ、、」
義人は微かに感じる何か温かいものの感触を確かめつつ、達した後の藤崎の眉間によった皺をぼやける視界で捉えていた。
そして、チラリと視線を移した先にある自分の性器から白くもなんともないサラサラした透明な液体が流れているのを見てからフッと力を抜く。
「はあ、、はあ、、」
「んー、、はあ」
「はあ、ん、どした?」
ちゅっ、と容易く唇を奪っていく藤崎に問いかけると、彼は眉間に寄せていた皺を深くして、呼吸を落ち着かせながら義人を見下ろす。
「中出しちゃった。1回シャワー浴びないともう1回できない」
「あ、うん、ごめんな?」
あまりにもショック、と言う顔をされて、正直義人は困ったように笑った。
確かに藤崎は義人の体調等には合わせてくれるが基本的に1回目が終わると2回目、3回目はすぐにしたいと言う派の人間だ。
中出ししてしまった後、処理をしないままだと義人の体調が悪くなる場合もある。
それを考えると今すぐ風呂場に向かうべきで、藤崎としては自分の欲求をねじ伏せて行かねばならない状況が苦しいのだろう。
「ごめん違う、謝んないで。すごい気持ち良かったし、義人と繋がってるなあって思えてすごい幸せ。ただすぐもう1回できないのが悲しい、、」
「ふはっ、はいはい。じゃあシャワー浴びながらもう1回すんのは?」
「いいの?身体辛くない?」
汗をかいて少ししっとりした髪が藤崎の頬に張り付いている。
わざわざ染めてくれた黒色の髪だ。
「大丈夫だよ、男だし」
「義人、、!!」
「はいはい。いいから早く左手にビニール巻けよ」
「ん」
ベッドの上でもう一度触れるだけのキスをして、藤崎は義人の上から起き上がり、未だに繋がったままのそこを見下ろし、ゆっくりと自身を抜き出した。
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