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第10話

タクシーに乗り込んだ二人は、そのまま隆也のマンションへ向かった。 玄関のドアを閉めるなり、隆也が晃成に壁へ押しやられると、激しいキスが降ってくる。 「んっ、ふっ、んっ…」 息をするのがままならないくらいのキス… 絡まってくる舌に応えるように隆也も必死で食らいつくけど、すぐにまた晃成のペースに引き戻されてしまう。 キスだけで体が熱くなっていくのを感じる。 お酒が入っているのもあるけど、きっとそれだけじゃない。 今日は、いつもよりずっとずっと自分が求められているのを全身で感じ取れるから。 「部長…どうし…たの?」 「何が?」 「何かあったの?」 「別に…何もない。ただ…今日はもうお前を離してやれない…」 「えっ、うわっ…」 ふわりと体が宙に舞う。 自分がお姫様抱っこをされていることに変な違和感を感じながらも、すぐ近くには晃成の顔があって、抵抗することも出来ず為されるがまま首へと手を回す。 寝室のドアが乱暴に開けられ、そのままベッドの上へ下ろされると、休む暇など与えられることなく晃成が覆い被さってきて再びキスの嵐が続く… 「んっ、ふんぁっ、んんっ…」 どんどんと深くになっていくキスに、隆也の全身から力が抜けていく… 涙が自然と滲んでくる。 「結木…」 「だって僕…嬉しくて…部長が、ここにいることが嬉しくて…」 「俺だって、同じだ…。お前が今この腕の中にいることが愛しくて堪らない…」 激しかったキスが、優しくて触れるようなキスへ変わった。 お互いの存在を確かめるように絡めあっていたキスとは違って、好きが伝わってくるような柔らかくて優しいキスだ。 好き…好き…好き… どうしようもないくらいに、僕はあなたが好きで堪らない。 どうすればこの気持ちを伝えられる? 「部長…」 「晃成…だ。二人の時に部長は止めろ。俺もそうする」 「こう、せい…さん」 「隆也…お前が好きだ」 「僕も…晃成さんが好き…。好きで、好きで、どうしようもない…」 「隆也…」 「僕を、抱いて下さい…。あなたでいっぱいにして欲しい…」 「仰せのままに…俺のことしか考えられなくしてやるから…」 耳元で囁かれたかと思うと、首筋に降ってくる唇の感触… 締めたままのネクタイが器用に解かれて、あっという間にカッターシャツのボタンまで外されていく… 顕になった胸元に、晃成の口付けが何度も行き交う。 「んっ、ふぅ…」 くすぐったいような不思議な感覚の中にも、晃成の唇が触れたところは熱を持ち、隆也自身が反応していた。 ゆっくり、ゆっくりと唇が下へとおりていく… -カチャッ- ベルトが外れる音が響く… スーツのズボンのボタンが外され、ジッパーをジジジッと音を立てながら下ろされると、すでに大きくなっている中心に晃成の手が触れて、形を撫でられる。 「あぁっ、んっ…」 「こんなになって…パンパンじゃないか…」 「ダメッ、そんなこと言わないで…」 「けど、本当のことだろ?」 意地悪く耳を甘噛みしながら問いかけられる。 何度も何度も撫でられて、ぴくんと腰が浮いたことに気づいたのか、ようやく晃成が収まり効かなくなっていた隆也を解放するようにパンツを下げてくれた。 「あっ、ん、あぁっ…」 開放されたのも束の間、すぐに次の快楽へと導かれる。 隆也のモノを口の中へ咥えると、上下に動かし始めた。 舌で裏筋を舐めながら、ちゅぱちゅぱと音を立てて刺激を与えられる。 「んっ、あっ、あっ、きもちっ…」 すでに熱を持っていたそこは、晃成からの刺激でもう限界が近づいていた。 早いって思われたっていい…イキたい… 「あっ、あっ、僕…もう…」 ジュルッという蜜の音が部屋中に響いたかと思えば、口の中に含まれていたペニスが握られ、激しく上下に動かされていく。 半分ほど咥えられたまま舌でなぞられ、根元は擦られ、一瞬で隆也の身体が絶頂へと向かう。 「あっ、あんっ、あぁぁぁっ、あぁっ…イクッ、イッちゃう…んぁっ…」 ドクンと勢いよく欲望が飛び出した。 それを晃成がすべて口で受け止めてくれる。 「はぁ…はぁ…はぁ…」 「早すぎ…」 「だって…すごく、気持ち良かったから…」 「っとに、可愛すぎだろ…」 待ちきれなかったのが目に余るくらいに、二人の格好は中途半端だ。 顔を見合わせて、クスッと笑ってしまう。 そして、どちらかともなく近づいてようやくお互い服を脱ぎ、肌を露にした。 「まだまだこれからだからな…」 「僕だって、まだまだ足りない…もっともっと晃成さんを感じたい…」 「感じさせてやるよ。たっぷりと…」 深くキスを交わすと、いつも余裕な表情をしている晃成が余裕なさげに隆也を見つめていて、隆也はまたその表情に心をくすぐられている。 こんなにも自分の感情を見せてくれていることが本当に嬉しくて堪らない。 「大好きだよ…」 今の素直な気持ちをストレートに伝えながら、晃成の首に腕を回すと、そのまま抱きしめられて、ベッドへと倒された。 何度も何度も口付けを交わす。 軽くチュッと唇をあてるだけのキス、舌を絡める濃厚なキス。 どのキスも堪らなく愛しい… だんだんと晃成の唇が移動して胸元へとやってくると、そこにある蕾にカリッと歯先をあてられる。 「はぅっ…」 「胸も感じるもんな…」 「意地悪…誰のせいだよ…」 「俺、だろ?」 「当たり前じゃないか…あなた以外とこんなことしない…」 「当たり前だ。俺以外とこんなことするなんて絶対に許さない」 「わかってるでしょ? 僕には、あなただけだ…」 「やっぱり、お前は可愛すぎる…」 可愛いという言葉を何度も告げられる。 触れる唇が、柔らかくて温かくて、好きが溢れてくる。 「くっ、うっ…」 何回体を重ねても、中へと入ってくる圧迫感は同じで、力を抜いているつもりでも自然と体が強ばってしまっている。 晃成も苦しそうに「うっ、くっぅ…」と顔を歪めながら、奥へと推し進めてくる。 「動くよ…」 一番深い場所まで辿り着いたのか、言葉を合図に晃成がゆっくりと腰を揺らし始める。 その動きに合わせて隆也も自分の腰を動かしていく… 深くて…熱い… 苦しいはずなのに、気持ち良さの方が全身に伝わってきて、快感へと変わっていくんだ。 「んはぁっ…あっ…あんっ…」 「お前、ここ好きだな…」 「だって…そこっ、気持ち良すぎて…おかしくなっちゃいそう…だよ」 膀胱とペニスの間にある窪みの部分に晃成のペニスが擦れると、自然と腰がビクンと浮き上がる。 執拗にその部分への刺激を与えられ、隆也の身体が早くも二度目の頂点を迎えたいというように震え出した。 「晃成さん、僕…また…」 「いいよ。何度だってイかせてやる」 「あっ、あぁぁっ…あっ…」 大きく反り返っている隆也の中心部分を掴むと、晃成が上下に擦り始めた。 前からと後ろからの動きに、隆也の思考回路はもう追いついていかない。わかっているのは、晃成から与えられる刺激が最高だということと、自分が全身で感じているということだけだ。 「あぁぁっ、きもちぃ…あっ、あんっ…」 「ほら、もう限界だろ? お前のここ、ピクピクしてる…」 晃成が耳元に口を近づけて囁いた言葉と同時に、隆也の先端部をキツく掴んだ。 「ダメッ…掴まれたら…出ちゃう…から…」 「出せよ。もう我慢しなくていい」 掴まれていた先端部が解放され、再び肉棒を上下に擦られていく。 「あぁっ、あっ、あんっ…もうイクッ、イッちゃう…あぁぁっ…はぁっ」 ビクンと隆也の身体が跳ね上がると、先端から勢いよく白い液が飛び出した。 達したことの倦怠感で力を失っていると、まだ達していない晃成が隆也の体を抱き上げて自分へと引き寄せる。 対面座位はより深く隆也の中に晃成が入り込んで来て、最奥にあるS状結腸まで到達している。 晃成が動く度そこに当たるペニスが、再び隆也の身体を震わせるほどの快感へと導いていく。 「あっ、んっ...、当たってる…気持ちいいところに当たってる」 「はぁ…隆也…相変わらず、きっつぃし、熱い…」 「僕も熱いよ…あっ、あっ…」 「ほらっ、自分でも動いて…」 「だって…僕…まだ…」 「じゃあ、動きたくなるようにするから…いくよ」 下から突き上げるように動かされて、浮いた身体が元に戻ると、更に奥深くへとペニスが入ってくる。 「あっ、あっ、ダメッ、あっ…」 「もっともっと感じたいだろ?」 「うん、もっと…もっと…感じたい」 「だったら、わかるよね?」 晃成からの問いかけに隆也が頷く。そして、自らも感じる場所を求めて腰を振る。 「あっ、あぁぁっ…晃成さん…感じる…気持ちぃよ…」 「はぁっ、んっ、くっ…俺も、気持ちっ…」 「感じてくれてるの?」 「当たり前だろ…お前が感じてるなら、俺も一緒に感じてる」 「んっ、嬉しい…好き…大好き…」 「当たり前だ。俺がこんなに本気なんだから、お前が本気じゃなきゃ許さない」 本気になっちゃいけないとわかっているはずなのに、止めることができない想いがある。 絶対にこれ以上求めちゃいけないとわかっているのに、求めてしまう想いがある。 隆也は晃成の本気という言葉を聞いて、今まで必死で押し殺そうとしていた想いが一気に溢れてしまうそうになる。 奥さんがいる人に本気になって傷つくのが怖かった。 抱かれていてもどこか罪悪感の塊で、苦しくて、でも一緒にいる時間はやっぱり幸せで、一分でも一秒でも長く一緒にいたいという思いがあった。 自分と過ごす時間だけ…その時間だけ自分だけを見つめていてくれればいいと言い聞かせてきた。 この言葉だけは、決して口にしてはいけないと飲み込んできたはずだったのに… 「僕は…本気であなたを愛してる…」 「俺もだ…。俺も本気でお前を愛してる…」 優しく唇が触れキスを交わす。 それと同時に二人はまた激しくお互いを高め合っていく。 「あっ、あっ、イクッ、あんっ…」 「俺も…イキそう…」 正常位で両足を開かれると、晃成の動きが一気に加速する。 「ダメッ、もう我慢できない…出ちゃうよ…はぁぁっ、あんっ…あっ、イクッ」 「くっ…俺も…イクッ、くっ…」 ビクンと身体が跳ねると、隆也はそのまま力なく横たわったままだ。 晃成の欲望が勢いよくお腹の上に放たれると、おでこにチュッと唇が触れて、「やっぱりお前は可愛い」と優しく目尻を下げた表情で伝えられた。 すごく、すごく幸せだと感じながら、隆也は眠りに落ちていった。

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