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第13話
「昨日は夜分に押しかけて、ごめん」
「それ、昨日も聞いた。あと、気にすんなって昨日俺言っただろ」
「うん。そうなんだけど……」
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あの後僕は家に帰らなかった。
逢坂様の体液が付いた身体で帰りたくなくて、田村のアパートに泊めてもらった。
深夜2時近かったにも関わらず、電話を掛けると田村はすぐに出て、教えてもらった住所にタクシーで向かった。
田村のアパートはあの場所からは遠く、タクシー料金は逢坂様から頂いたお金で払った。
タクシーを降りると、田村が外で待っていてくれていた。
田村の部屋に着くとすぐシャワーを借りて、身体を何度も洗った。
その後、タクシーに乗る前に寄ったコンビニで買ったパンツに履き替えて、田村から借りたスウェットに着替え、洗濯機を借りてそれまで着ていた服を全て洗った。
そんな僕の様子に不審に見えたはずなのに、田村は何も聞いて来なかった。
それどころか、自分は寝袋を使うから僕にベッドで寝るように勧めてきた。
流石にそれは断って、僕が寝袋を使わせてもらった。
翌朝。
田村の部屋の玄関で創士様に電話を掛けると、3コールで創士様は出た。
『柊?』
「……あ、創士様。おはようございます」
『ああ、おはよう。昨日はどうした?』
「あの、少し飲み過ぎて……そのまま眠ってしまって、友人の家に泊めてもらいました」
『……大丈夫か?』
「だ、大丈夫です。ちょっと吐いてしまって服を汚してしまったので洗濯させてもらって。あの、さっき干したのですが乾きそうもなくて…。乾くまでもう一晩お邪魔しようかと思っているのですが……、よろしいでしょうか?」
『それなら、迎えにいくよ』
「いえっ、そこまでは大丈夫です」
『…分かった。なら、明日帰る時、連絡して』
「はい」
後ろ髪引かれる思いに蓋をして電話を切った。
創士様にたくさん嘘をついてしまった。
本当のことなんて、友人の家に泊まったことだけ。
「柊…」
「あ…」
振り返ると、まだ眠っていたと思っていた田村が起きて僕の背後に立っていた。
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