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第15話
部屋の隅の山を崩し、より分け、出てきた衣類を洗濯機に入れ回した。
洗濯が終わるまでの間に雑誌をまとめて紐で括って玄関の横に積む。
ゴミにしか見えないものは、どんどんゴミ袋に入れ、物がなくなったところで掃除機をかけた。
田村のアパートは1Kでキッチンがフローリング、部屋が畳のため、掃除機をかけた後に雑巾で拭いた。
雑巾掛けが終わると、洗濯機から洗った衣類を取り出した。
洗濯物を干し一息つくと、ぐぅとお腹が鳴った。
無心で体を動かしていたから時間がどのくらい経ったのか分からなかったけど、お腹はお昼を過ぎたことを知らせてくれた。
流し台の下を開けると少しの米と大量のカップラーメンが入っていた。
田村の食生活に不安を感じつつ、有り難く醤油味を一個頂く。
創士様との生活では食べる機会がなかったけど、お湯を入れて3分で食べれる手軽さの割に美味しくて驚いた。
使った食器を洗い終えると、もうすることがなくなった。
開けた窓から差し込む午後の日差しと吹き込む風にぼうっとしてると、悪夢のようなあの一時の記憶が過った。
スウェットの上着を捲り、身体のあちこちに付いた昨日の痕を見る。
爪を立てられて瘡蓋になった痕。
引っ掛けられて出来た赤い筋。
それと、胸と脇腹に噛み跡があった。
確か、ズボンの下に隠れている太腿にもあった。
これら全て、創士様以外に付けられた証。
この傷が消えるまで、僕は創士様に抱かれることはできない。
ちがう。
創士様以外の人に付けられたこの痕を創士様に見せたくない。
ちがう。
創士様以外の人に抱かれたことを創士様に知られたくないんだ。
逢坂様にはもう会いたくない。
けど、学生証を取られてしまったから、次の呼び出しが来たら応じないといけない。
創士様に気づかれないよう、何としても取り返さないと。
でも、取り返した後は?
学生証を取り返しても、逢坂様から逃げる事は叶わない。
そんなことをグルグル考えていたら、突然迫り上がる感覚に襲われてトイレに駆け込んだ。
焼けつくような喉の痛みと息苦しさと共に吐いた。
折角食べたカップラーメンは消化される前に汚物となってトイレに流されていった。
口の中を何度も濯いでからコップ一杯の水を飲む。
お腹の中が空っぽになったのに、もうお腹は空かなかった。
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