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第27話

夏休み前、最後の講義が終え帰り支度をしていると、視線を感じて横を見る。 そこには田村が片付けもせず頬杖をついて僕を眺めていた。 「な、何?」 「んー、別に大したことない」 その顔は何か言いたげだった。 あれから、月に一度程度、田村のアパートに泊めてもらっている。 大体は、僕が創士様より早く帰宅できない時だ。 ホテルのシャンプーの匂いをさせて帰ることはできない。 かと言って、逢坂様が触れ舐められ中に注がれた身体のまま帰ることはもっとできない。 そんな時、つい田村を頼ってしまう。 田村は、連絡を入れると、遅い時間にも関わらず笑顔で迎え入れてくれる。 そして、着替えとタオルを渡し、すぐにシャワーを浴びさせてくれる。 風呂から上がると、布団も用意してくれた。 あの後、いつ僕が来ても良いようにと買ってくれたらしい。 そこまでしてくれるのに、何も聞かずに僕を泊めてくれた。 「あ、あのさ……」 「んー?」 「言いたいことあるでしょ?何?」 もう一度聞いてみると、田村は僕の全身を眺めた後、僕の手首を掴んだ。 「えっ、あの……」 「……やっぱり……ちょっと痩せた?」 「っ」 ドキリとした。 最近、パッと見では体型が判りづらいダボっとした服ばかり着ていた。 それなのに気づかれていた。 腰のベルトは一番内側の穴になった。 元々、内側から3つ目の穴でも余裕もあったから、気づかれることはないと思っていた。 「夏、バテで…」 「……そう」 田村は目尻を下げて僕を見たけど、それ以上は何も言わなかった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 田村と別れた後、真っ直ぐ家に帰った。 今日は創士様が早く帰ってきて、一緒にご飯を食べに行くからだ。 最近、土日も忙しい創士様といつもより長く一緒にいられることに心なしか気持ちが弾む。 「食べたいもの、考えておいて」 今朝、僕が車から降りる時に創士様はそう言った。 僕は創士様と居られるなら何でもいいから、すごく悩んだ。 嬉しい悩みに頬が緩む。 「何にしようかな…」 つい言葉に出てしまった。

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