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第28話

僕の悩みは店に着いても続いた。 「柊、決まった?」 「ま、待ってください。……え…と…、じゃ、じゃあ、とろふわオムライスで」 「ははっ、オムライスって。家でも時々食べてるに?」 「っ、そ、それを言うなら、創士様だって煮魚定食じゃないですか」 食べたいものを決められなかったため、行き先をファミレスにしてもらった。 あとはメニューを見て直感で選べばいいと思っていたのだけど、ページを捲る度、更に迷うだけだった。 結局、選んだのは好きなものだった。 「おじいさんたちへのお土産、今年はどうしようか?」 「そうですね。向こうでは食べれない珍しい物がいいとは思いますけど……、生菓子より、できるだけ日持ちするお菓子ですかね」 「結局、去年とあまり変わり映えのない物になりそうだな」 「ふふっ、そうですね」 食後のお茶を飲みながら、そんな話をする。 おじいさんとおばあさんは、僕が家出した先でお世話になった人たちだ。 僕を本当の孫のように扱ってくれて、創士様の元に帰った後も、盆正月など、纏まった休みの度に創士様と2人で帰省している。 東北の農村部にいる2人は旅行はあまりしないため、珍しいお菓子を持っていくととても喜んでくれた。 今年の夏休みも創士様と2人で行く予定で、行きは創士様と一緒に向かって、創士様は1週間滞在して、僕は2週間ほど滞在する予定だ。 「あ、猫たちのお土産も買いましょう」 「なら、猫じゃらしとか、またたびか?」 「首輪もいいですね」 おじいさんたちは春に家の軒下で母猫とはぐれた子猫を保護して飼い始めたと言っていた。 おばあさんは毛糸で作った紐を首輪として付けているが、子猫が戯れてすぐ壊してしまうと言っていた。 今年はおじいさんたちだけでなく、新しい家族の一員となった猫とも会える。 楽しみが増えて、お土産選びは楽しい悩みとなった。 「柊」 「はい」 「……あ、いや……。週末、お土産に行こう」 創士様は顔に手を当て少し考えてからそう言った。 創士様がどんな言葉を飲み込んだのか気になったけど、今は聞いてはいけないような気がした。 「はい」 気づかないふりをして、笑顔で返事をした。

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