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第29話

夏休みに入って2週間目。 僕と創士様は、おじいさんたちの家に向かった。 新幹線で3時間ほど揺られて、着いた駅からはレンタカーで移動した。 車中では、お正月振りに会う2人に、創士様との会話が弾んだ。 「クロスケ、お土産喜んでくれますかね?」 「そうだな。クロスケより、おじいさんたちが喜びそうだな」 僕は助手席から後部座席に置いた紙袋を見る。 おじいさんたちへのお土産のお菓子より、黒猫(クロスケ)のお土産に迷ってしまい、創士様と僕はあれもこれもとたくさん買ってしまった。 紙袋からチラリと覗くおもちゃにふっと笑ってしまう。 僕たちは、それぞれやりたいことを話していたら、おじいさんたちの家までの2時間の道のりはあっという間に過ぎた。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 「創士さん、柊、よく来たね。疲れたでしょう?」 「おばあさん、お久しぶりです」 家の前の広いスペースに車を止めると、おばあさんが家から出てきて僕たちを迎えてくれた。 荷物を下ろしていると、畑から戻ってきたおじいさんが手伝ってくれた。 「ははっ、たくさん買ってきたな」 「本当。クロスケ喜ぶわね」 紙袋から覗くおもちゃやオヤツに、おじいさんたちは喜んでくれた。 玄関の網戸を開けると、中から「にゃー」と鳴き声が聞こえたが、創士様と僕が中に入ると鳴き声の主ークロスケーはサッと逃げてしまった。 「あ……逃げられちゃいましたね」 「仕方がない。元来、猫は警戒心が強いからな」 「大丈夫よ。ちょっとびっくりしただけだから、すぐに懐くわよ」 あからさまにガッカリする僕に、おばあさんは笑いながらそう言ってくれ、おじいさんも笑って頷いてくれた。

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