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第33話

「ん……あれ…?」 目を覚ますと1人だった。 料理が並んでいたテーブルは隅に追いやられ、その場所に布団を2組敷き、その1組に僕は寝ていたようだ。 「一緒に入ろう」なんて急に真面目な顔をした創士様に言われ、恥ずかしくて近くにあったグラスを掴んで一気飲みした。 水だと思ったそれは日本酒で、僕は一気に酔っ払った。 それからの記憶は曖昧で、美味しかったはずの料理はフワフワした記憶に残っているものの、味もほとんど覚えてなかった。 「あー、デザート美味しそうだったなぁ」 デザートのゼリーは夕食での密かな楽しみだったのに、その辺りに至っては、味も、そもそも食べたかも覚えていない。 枕元に置かれたペットボトルを取り、一気に半分ほど飲む。 創士様が置いてくれたであろうそれは、眠っている間に少しぬるくなっていたが、喉が渇いていた僕は特に気にならなかった。 「ふぅ」と一息つくと、入り口からガチャガチャと音がした。 程なく、創士様が入ってきた。 「柊、起きたのか。気分はどうだ?」 「ぁ…はい、大丈夫です」 「そうか」 散歩から戻ってきた創士様は僕の側に座り、手に持っていたビニール袋から小さなカップを取り出した。 「アイスを買ってきた。食べるだろ」 「はい。ありがとうご……えっ…」 創士様は蓋を開けてスプーンでアイスを掬うと僕に差し出した。 目の前のピンク色のアイスが乗ったスプーンに戸惑っていると「ほら、あーん」と創士様が微笑んだ。 思い切ってパクッと食べると、甘酸っぱい味が口の中に広がった。 「あ、これ……さくらんぼ?」 「どうだ?」 「……すごく美味しいです」 「良かった……。ほら、もう一口」 嬉しそうに創士様は笑うと、またアイスを掬って差し出した。 「あの、自分で食べます」 「ダメだ。俺が食べさせる」 そう言ってきかない創士様に押し切られ、最後の一口まで食べさせてもらった。 「ごちそうさまでした」 飲みかけのペットボトルの水を飲もうとすると、その手を掴まれた。 「その前にーー」 「…んっ…」 創士様の唇が僕に触れた。 舌で唇をノックされそっと開くと、するりと口内入ってきた。 歯列、上顎、頬、下顎と満遍なく動く舌に、アイスで冷えた口の中はすぐに熱くなった。 キツく抱き締める身体にしがみついて、僕の口内を動く創士様の舌を無我夢中で追いかけて捕まえたと思ったら、逆に僕の舌を捕まえられてしまう。 絡まる舌に、熱くなる身体はアイスの味を忘れてしまうほど蕩ける。 長いキスから解放された時には、僕の身体から力が抜けてしまった。 「アイス美味かったな。お土産に買って帰ろうな」 その言葉にキスだけで脱力し切った僕はなんとか頷いた。

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