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第38話

帰ったら、話がしたい。 創士様がどうしてそんなのことを突然言ったのか分からなかった。 そういえば、旅館でも何かを言おうとして噤んだ気がした時があった。 ドクンドクンと心臓がうるさく感じた。 心当たりがないと言ったら嘘だ。 僕はずっと創士様に嘘をついているから。 創士様はきっと、僕が何かを隠していることに気付いているのかもしれない。 逢坂様のこと。 気付いていたらどうしよう。 どうしようーー。 「柊、柊!」 「っ、はっ」 揺さぶられて目を開けると、僕を心配そうに見上げるおばあさんの顔があった。 「柊、大丈夫?」 「……あ、え…と、だ、大丈夫です」 「大丈夫、じゃないわ。顔色が真っ青よ。少し休んできなさい」 「え、でもーー」 「野菜を運ぶのはおじいさんに手伝ってもらうから。ほら、行きなさい」 「…はい」 おばあさんに促され、家に戻って横になった。 目を閉じるけど眠れそうにない。 2週間後、創士様は何を話すのだろうか。 頭に浮かぶのはそれだけだった。 そのまま暫く横になっていると脚に何かが当たった気がして起き上がる。 クロスケが僕に寄り添うように丸くなっていた。 「クロスケは優しいね」 フワフワの毛並みを撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らした。 今ここには僕とクロスケしかいない。 この不安を口にしても、クロスケにはきっと分からないし、誰にも話さない。 「クロスケ、僕ねーー」 携帯が鳴った。 創士様が乗った飛行機はもう空の上だから、掛けてきたのは田村だろうか? そう思い画面見てドキリと心臓が跳ねた。 身体が強張り動けない。 少しして留守電に切り替わり切れたが、すぐにまた同じ番号から電話が来た。 深呼吸をして通話ボタンを押し耳に当てる。 「…はい。………はい…分かりました」 相手は要件だけ伝えると電話を切った。 汗ばむほど暑いはずなのに、僕の身体は少し震えた。

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