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第43話
「柊さん、お体の具合でも悪いのですか?」
3週間振りに来た家政婦さんに、挨拶もそこそこにそう言われた。
「元気ですよ」
「でも…顔色が少し悪いように見えます。お手伝いは大丈夫ですから、横になって少し休んでください」
食事の準備を手伝おうとしたのだけど、キッチンには入れてもらえなかった。
ソファーに横になり目を閉じる。
明日、創士様が帰ってくる。
嬉しいはずなのに不安ばかり募る。
「柊さん、お茶、ご一緒にしませんか?」
「あ、はい」
2人分のお茶とお菓子を乗せたトレイを持って家政婦さんがニッコリ笑った。
「主人と久しぶりに北海道に行ったので、そのお土産にお菓子を買ってきたのですが、お口に合うかしら?」
「わぁ、美味しそうですね。いただきます」
ホワイトチョコでコーティングされたパフのお菓子を一口食べる。
サクサクとした食感のパフとホワイトチョコがよく合っていて美味しかった。
「これ美味しいです。ありがとうございます」
「まあ、良かった。主人も私も歳をとってしまっているから、若い人の好みがよく分からなかったの」
「この紅茶も美味しいです」
「ふふっ、それはラベンダーがブレントされたお茶よ。ミルクティーにしても美味しいらしいから、ミルクも使ってね」
「はい、ありがとうございます」
もう一口飲んだ後、ミルクを入れて飲むとまろやかになって美味しかった。
「さっきより顔色が良くなったみたいですね。ふふっ」
そう言って優しく笑いかけてくれた。
この年配の家政婦さんが来てくれるようになったのは、僕が創士様に引き取られて少し経った頃からだ。
元々、創士様の実家で定年まで働いていた方で、創士様に頼まれて僕が高校を卒業するまでの期間限定で来てくれるようになったのだが、今も週2から3で来てくれている。
「柊さん、晩御飯、何が食べたい?」
「えっ、何でもいいですよ」
「ダメです。もう、面倒臭がってカップラーメン食べたでしょ。食べちゃダメとは言いませんけど、野菜も一緒に食べて下さいね」
「あ、ごめんなさい」
この家で創士様以外にも叱る人がいることをすっかり忘れていた。
「今日はお肉にしましょうね。豚肉で…、そうね…。さっぱり食べれる冷しゃぶうどんにしましょ」
「はい」
「そうと決まったら、買い出しに行きましょ」
そう言って張り切る家政婦さんと一緒にスーパーに向かった。
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