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第49話

重だるい体を引きずって田村のアパートに着き、借りている合鍵を使って中に入ると、田村は眠っていた。 僕はサッとシャワーを浴びホテルの石鹸の匂いを落としてから、晩御飯を作り始めた。 乾麺のうどんを細かく切って湯掻いた後、細切れにした野菜とご飯を一緒に鍋に入れ雑炊にした。 肉が食べたいという田村のため買ってきた鶏肉も入れた。 少しすると、匂いに釣られて田村がもそもそ起きてきた。 「はー。よく寝たわー。今日は何?」 「雑炊。鶏肉入れたよ」 「やった!」 肉が入っただけで子供のようにはしゃぐ田村に思わず笑ってしまう。 「熱はどう? 」 「ちょい高めの平熱ってとこかな」 「病院は行ったんだよね」 「行った、行った。いろんな薬貰ったわ」 朝方、田村の熱が再び上がったため、病院に行った。 本当は僕も付き添うつもりだったけど、「近所のクリニックに行くし、子供じゃないから大丈夫だよ」と言われ、僕は渋々大学に行った。 逢坂様に呼び出されなかったらもっと早く帰れるはずだった。 苦しそうに呼吸をしていた田村の様子を思い出して唇を噛む。 「心配してくれんのは嬉しいけど、俺の場合は自業自得なんだし、お前の看病のおかげで良くなってきてんだからそんな顔すんな」 僕の頭をガシガシ撫ででぶっきらぼうに言う田村の手を掴んで外す。 そんな田村の優しさにふっと笑う。 「……うん。そうだね。自業自得だね」 「わっ、酷え…って、あれっ?柊、手首どうした?」 「えっ、あ…」 手首はベルトで締められていた際に擦れたようで、その跡が赤く残っていた。 思わず隠してしまうと、田村に不思議そうな顔をされた。 「ちょ、っとよそ見してたら引っ掛けちゃったのかも…」 「柊でも、そんなことあるんだな。昨日のバイト、結構疲れたんじゃねぇ?」 「あ…うん。バイトするの初めてだったから、そうかも」 田村が深くは聞いてこないことに僕はホッとした。 明らかに縛られた跡に、あんな適当な理由で納得するとは思えなかったから。 俯き黙ってしまった僕の頭を田村はポンポンと叩くと「汗掻いて気持ち悪いからシャワー浴びてくるわ」とバスルームへ向かった。

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