50 / 118
第50話
田村の風邪は処方された薬で劇的に良くなった。
一応、大事をとって、代理のバイトは土曜日までやった。
と言っても、隔日で4日間だけ。
その間も、看病のため田村のアパートに泊まった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
お店は昼の営業が終わり、2時間ほどの休憩に入り、僕のバイトも終わった。
「はい。お給料」
「ありがとうございます」
バイトは短期のため、給与は現金で頂いた。
二万ちょっと入った給与袋。
僕にとっては初めてのもので、すごく重く感じた。
「柊、給料、何使う?」
お休みの田村は、今日はお客様として来て、僕に絡んできた。
「こら、田村くん。タカらないの」
「って、はーい」
奥さんが田村の頭に拳骨を落とした。
その奥さんの顔が朝から少し青白くて、気になって聞いたけど「なんでもない。大丈夫」としか答えてもらえなかった。
「でも、実際何に使うのかは気になるな」
「ま、あなたまで。…でも、私も気になるかな」
3人は興味津々に僕を見る。
正直、何も考えていなかった。
創士様から頂くお小遣いで十分足りているし、今は特に欲しいものもない。
「うーん」と考えるけど何も浮かばない。
「なら、家族へのプレゼントでも買ったら?」
「プレゼント…?」
「そ、日頃の感謝の気持ちで、お花とか美味しいご飯なんて、どう?」
奥さんの提案に僕はハッとした。
そうだ。来週は創士様の誕生日だ。
毎年、家政婦さんと一緒にちょっと豪華な料理を作って、近所のケーキ屋さんのケーキで細やかなお祝いをする。
引き取られた翌年から、僕はお小遣いでお花を一輪買ってプレゼントした。
本当は花束にしたかったけど、元は創士様のお金だから、それはできなかった。
でも、今年はこのお給料で花束が買える。
お花以外のプレゼントだって買える。
そう考えたら、ワクワクしてきた。
「家族が、来週誕生日なんです。だからーー」
「まぁ、それ絶対喜んでくれるわよ」
うんうんと、みんなが同意してくれた。
僕は早速、帰りにプレゼントを買いに行くことにした。
ともだちにシェアしよう!