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第50話

田村の風邪は処方された薬で劇的に良くなった。 一応、大事をとって、代理のバイトは土曜日までやった。 と言っても、隔日で4日間だけ。 その間も、看病のため田村のアパートに泊まった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ お店は昼の営業が終わり、2時間ほどの休憩に入り、僕のバイトも終わった。 「はい。お給料」 「ありがとうございます」 バイトは短期のため、給与は現金で頂いた。 二万ちょっと入った給与袋。 僕にとっては初めてのもので、すごく重く感じた。 「柊、給料、何使う?」 お休みの田村は、今日はお客様として来て、僕に絡んできた。 「こら、田村くん。タカらないの」 「って、はーい」 奥さんが田村の頭に拳骨を落とした。 その奥さんの顔が朝から少し青白くて、気になって聞いたけど「なんでもない。大丈夫」としか答えてもらえなかった。 「でも、実際何に使うのかは気になるな」 「ま、あなたまで。…でも、私も気になるかな」 3人は興味津々に僕を見る。 正直、何も考えていなかった。 創士様から頂くお小遣いで十分足りているし、今は特に欲しいものもない。 「うーん」と考えるけど何も浮かばない。 「なら、家族へのプレゼントでも買ったら?」 「プレゼント…?」 「そ、日頃の感謝の気持ちで、お花とか美味しいご飯なんて、どう?」 奥さんの提案に僕はハッとした。 そうだ。来週は創士様の誕生日だ。 毎年、家政婦さんと一緒にちょっと豪華な料理を作って、近所のケーキ屋さんのケーキで細やかなお祝いをする。 引き取られた翌年から、僕はお小遣いでお花を一輪買ってプレゼントした。 本当は花束にしたかったけど、元は創士様のお金だから、それはできなかった。 でも、今年はこのお給料で花束が買える。 お花以外のプレゼントだって買える。 そう考えたら、ワクワクしてきた。 「家族が、来週誕生日なんです。だからーー」 「まぁ、それ絶対喜んでくれるわよ」 うんうんと、みんなが同意してくれた。 僕は早速、帰りにプレゼントを買いに行くことにした。

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