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第51話
百貨店で散々悩んで、なんとか良いプレゼントを買うことができた。
残りのお金で花束も買うつもりだったけど、ここで予算オーバーしてしまったから今年も一輪だけになりそうだ。
僕はプレゼントを潰さないよう大事にバッグに入れて、1週間ぶりに家に帰った。
「柊、おかえり」
「創士様。ただいま帰りました。急に1週間も留守にしてすみませんでした」
「友達の風邪は治ったのか?」
「はい。病院で処方された薬であっという間に」
「そうか」
玄関で迎えてくれた創士様はクスリと笑うと僕の頭を撫でてくれた。
バッグを傍に置き、急いで靴を脱いだ…つもりが靴が引っかかってて、足を上げた時に段差にぶつけた。
バランスを崩した僕はそのまま創士様の胸に抱きついてしまった。
「あっ…、ごめんなさい」
慌てて離れようとするが、その前に創士様の腕が僕の背中に回った。
「柊、体が熱いな」
「そ、外が、暑かったので。…あ、汗臭いですよね?」
「そんなことはない。柊の匂いだ」
創士様はそう言って僕の首筋に顔を寄せた。
ずっと屋内にいたのか、創士様からは汗の匂いはしなかったが、その体は少し細くなった気がした。
「創士様。ご飯、ちゃんと食べましたか?」
「ははっ、お母さんか?…まあ、適当にな」
「ちゃんと食べなきゃダメです。夜は僕が作ります。オムライスでも良いですか?お店で美味しい作り方、教えてもらったんです」
「そうか、楽しみだな」
顔を寄せたままクスクスと笑われ、くすぐったくて首を竦めると、創士様は耳元に唇を寄せてきた。
「その前に、俺に柊を味わわせてくれないか?」
「あ、味っ、なっ」
慌てる僕から創士様は少し体を離し、額を合わせ見つめ合うと唇が触れてきた。
「ふっ…」
角度を変え数回触れ、僕が堪らず口を開けたところでそっと舌を差し込んできた。
ゆっくりと丁寧な口付けをされると、僕の心臓は高鳴り息が上がった。
創士様は息が荒い僕を気遣ってか唇を離すけど、それが寂しくて、今度は僕から口付けた。
「ん…。柊、そんなにキスをしたら止まらなくなる」
「ん、ふ…止めなくて、いいです。…創士様、止めないで…」
逢坂様に触れられた瞬間から、ずっと創士様に触れて欲しかった。
創士様だけに触れられたいって願った。
「…なら、俺の部屋に行こう」
「あ…キス…」
「ふっ、じゃあ、キスをしながらゆっくり行こう」
唇に齧り付く僕を優しく抱き上げた創士様は、言葉とは逆に足早に部屋に向かった。
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創士様に支えらながら少し遅い時間に作ったオムライスは、形が少し悪かったけど美味しいって言ってもらえた。
誕生日プレゼント、創士様、喜んでくれるといいな。
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