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第55話
空気が変わったような気がして時計を見ると、長針は4時を刺そうとしていた。
ベッドに座り込んだまま何時間もいたようだ。
それより。
ドアの向こうに人の気配がする。
部屋の電気が点いているからドアの隙間から光が漏れている筈なのに、ドアの向こうに感じる気配はノックすらしなかった。
暫くするとその気配が僕の部屋から離れていく足音がした。
僕はふうっと息を吐きベッドに体を倒すと、そっと目を閉じた。
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6時。
パジャマからTシャツとジーンズに着替えて顔を洗いに行った。
鏡の前の顔は酷くて、顔を洗って少しだけマシになった気がしたが、目の下に薄らできた隈は消えなかった。
息を深く吐いてから頬を叩いて気合を入れると、朝食の準備のためキッチンに向かった。
朝食は、昨日の残り物を使うことにした。
とはいえ、朝からビーフシチューは重いので、添え物のパンとサラダを目玉焼きに添えることにした。
スープは、残り物の野菜を細かく刻み適当なサイズに切ったベーコンと一緒に煮込んで、コンソメスープと塩胡椒で味を整えた。
「柊、おはよう」
「創士様、おはようございます」
食事を並べ終え、待っていると創士様が現れた。
いつもより20分遅い。
「創士様、寝坊ですか?ふふっ、今、スープとコーヒーお持ちしますね」
「…ああ、ありがとう」
いつもと変わらない朝の他愛のない会話。
だけど、その視線を上手く合わせることができなかった。
「昨日はごめん」
「…ぇ、何がですか?」
「俺の誕生日のご馳走を用意してたんだろう?」
「っ、…仕方がないですよ。接待だったんですよね?」
「…ああ」
困ったように眉をハの字にして笑う姿に、一瞬言葉が出なかった。
僕が振っておいてなんだけど、昨日の接待の話は聞きたくない。
「あっ、昨日は創士様の好きなビーフシチュー作ったんです。お昼に温めて食べましょう。あと、ケーキも食べましょうね」
僕は務めて明るく振る舞い笑った。
だって……
仕方がないんだ。
接待なんだから。
だから……
僕が邪魔をしてはダメだ。
困らせたくない。
だって、僕は創士様のことをーー
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