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第60話
もう、嫌だ。
触れられたくない。
もう…無理。
そう思ったら、体が勝手に動いた。
こんなのみっともないって、無様だってわかってる。
でも、もう限界だ。
逢坂様 に触れられること。
これ以上、創士様に嘘をついて逢坂様 に会うこと。
何があっても契約してはいけなかった。
最初から、全部。
全部間違えていたんだ…。
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「柊、わかってる?それ、契約不履行だよ」
「お金はお返しします。本当は、頂くつもりはなかったから」
どんな形でも、創士様の役に立てればそれで良かった。
でも…。
今になってわかった。
こんなこと、何の意味も持たないことを。
こんなこと、創士様が喜ばないことを。
ここまできて、やっと。
「じゃあ、彼にバラしていいの?」
肩がビクッと跳ねる。
「そ、それは…」
「君の裏切りを知ったら、柊、捨てられてしまうかもしれないね」
僕の身体はカタカタと震える。
"捨てられる"
僕がこの世で一番怖い言葉。
だけど、僕は一番大切な人を傷つけ続けた。
逢坂様のいう通り、捨てられるかもしれない。
想像しただけて、怖くて怖くて息の仕方がわからなくなる。
息を吸うことも吐くこともできず口をハクハクしている顎を掴まれ、上を向かされる。
「1週間。君に考える時間をあげる。それまでしっかり考えて答えを出して…」
至近距離で逢坂様と目が合う。
捕食者の目に絡みとられた僕は、その手が離れるまで動くことができなかった。
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