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第64話
「んっ……んっ……ふっ」
後孔に入れられたローターの振動は一定のリズムを刻むが、薬で感度が上がった身体では声を抑えることができない。
逢坂様は僕の後ろにローターを入れた後、「僕も準備をしてくるよ」と言い残して部屋を出て行った。
頭がずっと殴られているように痛い。
そして、身体は燃えるように熱いのにゾクゾクとした悪寒と嫌な汗がダラダラ流れる。
今は薄手の掛け布団に包まり必死に耐えるしか術がない。
「ひやぁっ……あ、あ……」
不意にローターの動きが強くなり、身体が仰反る。
「ふふ、感度は最高だね」
頭痛と振動に耐え、布団から顔を出し振り返ると、先ほどとは装いを変えた逢坂様が側に立っていた。
手に持つ小型のリモコンを弄ると、元の振動に戻った。
「これ……とっ、て……」
「ダメだよ。メインイベントはこれからなんだから」
「メイン…イベント?」
何のことか聞こうとした時、インターフォンが鳴った。
「来たか。柊、お喋りはここまでだよ。大人しく待ってて。……静かにしてないと見つかっちゃうからね。ふふ」
「…何?……ぁあっ」
逢坂様は僕の問いには答えることなく部屋を出て行った。
「ぅっ……っ……くっ……」
逢坂様に言われた通り声を抑えようとするが、不規則になった振動の強さにどうしても声が漏れてしまう。
布団に顔を埋めてその声を抑えるが、ビクビクと反応する身体に衣擦れの音が響く。
遠くからパタパタと近づいてきたスリッパ音が部屋の近くで消えた。
向かいの部屋にでも入ったのだろうか?
そう考えた瞬間。
「あっ…くっっ」
何度目かの強い振動に必死に抑えていた声が漏れ、弾かれたように身体が動いたことで激しい頭痛に襲われた。
痛みと薬のせいで僕の思考はもう正常に働かなくなった。
だから、少しだけドアが開いていたこと、僕の声が外に漏れてしまっていたなんて気づかなかった。
そして、足音の主が部屋の中に入ってきたなんて気づかなかった。
「あっ……いっ……ああっ」
「……大丈夫ですか?」
「っ!」
すぐ近くから僕を気遣う声が聞こえ、僕の身体は凍りついた。
ダメーー
願いは叶えられることはなく、布団を捲られた。
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