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第70話

※創士視点 意識を失った柊の身体は燃えるように熱かった。 顔色も今朝より酷い。 チラッと見えた腕には注射針の痕が見えた。 体調の悪い柊に何かしらの薬を打ったようだ。 タクシーを待っている間に近場で救急対応をしている病院を調べようとしたが、すぐに手が止まった。 このまま病院に連れて行くべきだが、柊はきっと望まないだろう。 俺はすぐ家政婦に連絡した。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 「坊っちゃんのお願いとはいえ、この子は病院に連れて行くべきだよ」 近所の医者を家に呼んで診てもらうとそう言われた。 この高齢の医者は家政婦の知り合いで、地元で息子と小さな医院を開いている。 診察のほとんどを息子が行っていることもあり、連絡するとすぐ来てくれた。 「たぶん風邪だろう。薬を打ったが熱はすぐには下がらないよ。逆にまだまだ上がると思った方がいい」 氷枕に乗せたにも関わらず柊の額からは汗が吹き出していて、家政婦が濡らしたタオルでこまめに拭き取っている。 医者は目配せで俺を廊下に呼んだ。 「あの子。何を打たれた?」 医者の言葉に顔が強張った。 高齢とはいえど半世紀近く患者と向き合ってきた医者だ。 気づかないはずはない。 「……わかりません……」 「…隠さんでいい。性欲増進的なものだろう?」 「…たぶん」 医者はため息をついた。 「あんな状態の子になんというもんを打ってるんだ。殺す気か」 「……すみません」 「坊っちゃんのせいじゃないだろう。しかも、腕の痕からして一度や二度じゃないようだ。以前、短期間に何度も打たれたんだろうな。それじゃあその辺の病院には連れて行けないよな」 「ありがとうございます」 全てを見透かしたように言う医者は、俺の背中をポンと叩いてニヤリと笑った。 「熱が下がって目を覚ましたら、ちゃんと話を聞いてやれ。大事な家族だろ」 「……はい」 どこまでも食えないジジイだ。 それから2日後。 仕事中に家政婦から柊が目覚めたと連絡が入った。

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