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第72話
熱は日曜日には平熱まで下がった。
「ぁー」
「柊、無理に声を出すな」
「だい゛っ、ゲホゲホゲホッ」
「大丈夫じゃないだろ。ほら、水飲むんだ」
水の入ったグラスを渡されてゆっくり飲む。
熱が下がり始めた頃から出始めた咳で、喉の腫れが引いても声は出しづらかった。
今日の朝食はミルク粥だ。
前日に家政婦さんが用意してくれたやつだ。
僕が寝込んでから家政婦さんが毎日様子を見に来てくれて、こうして僕の喉に負担がかからないものを作ってくれた。
それを創士様が温めてくれ、僕が食べきれなくてもいいようにと同じものを一緒に食べてくれる。
病人じゃない創士様には物足りないはずなのに、文句一つ言わず食べてくれた。
「本当に行くのか?」
心配そうに訊く創士様に頷く。
咳と声が出ない以外、体はもう大丈夫だから大学に行かないと。
薬を水で流し込むとマスクを着けた。
「わかった。でも無理はするなよ」
僕が頷くのを確認すると、僕をリビングに行かせ後片付けをしてくれた。
「柊、おはよー。風邪は大丈夫か?」
「ぁ、ぉ…ゲホゲホッ」
「うおっ、大丈夫か?無理に喋んな」
咳き込む僕の背中を田村はさすってくれた。
席に着くと、田村は僕が休んでいた間のノートのコピーをくれた。
ざっと内容を見た限り、なんとかついていけそうでホッとした。
講義中、何度か咳き込んだ僕の背中を田村がさすってくれた。
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3日後。
声も少しずつ出せるようになり、咳き込むことも少なくなった。
お粥やうどんばかりだった食事もは、少しずつ固形物も食べれるようになってきた。
今日は家政婦さんが来れないと聞いているから、僕が創士様に何か美味しいものを作ろうと思い、メニューを考えながら大学を出るとそこに1人の男性が僕を待っていた。
「沙耶華様があなたにお話がございます。こちらへ」
その人は僕の返答を待つことなく少し離れた場所に止めてある車に案内した。
車のドアを開けてもらうと、花の香りがフワッと車外に漏れた。
「乗って。あなたに見せたいものがあるの」
その言葉は僕に否とは言わせない圧があった。
そして、車は40分ほど走り目的地に着いた。
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