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第73話
出迎えてくれた執事さんに、お屋敷一階の一番奥の部屋に案内された。
執事さんがノックをしドアを開けると、中から子守唄が聞こえてきた。
「あ、沙耶華ちゃん、おかえりー」
沙耶華さんに続いて中に入ると、おくるみに包まれた赤ちゃんを抱いた女性がソファーに座っていた。
女性はフリルの付いた可愛らしい服を着て少女の様な人だけど、沙耶華さんより歳上に見えた。
「叔母様、ご機嫌はいかがですか?」
「沙耶華ちゃん『叔母様』じゃなくて、前みたいに『お姉さん』て呼んでって言ってるでしょ。もう」
目の前の女性は少女のように頬を膨らませたが、沙耶華さんはそれに返すことはなかった。
「叔母様に会っていただきたい方を連れてきました」
「会わせたい人?あ、そこの人?でも、ひぃくん眠ったばかりだから静かにね」
女性は人差し指を口の前に立てて静かにするようにジェスチャーをした。
その腕に抱く赤ちゃんの顔はよく見えなかったが、起きる気配はなかった。
「マスクを取って」
「ぇ…?」
「いいから取りなさいっ」
「っ!」
沙耶華さんにマスクを剥ぎ取られ、露わになった僕の顔を見た女性は突然立ち上がった。
女性からは笑顔は消え、目を見開き信じられないという顔をした。
「……え……しゅう、くん?」
そして僕は、今にも落としそうな状態で女性に抱かれている赤ちゃんを見て驚いた。
「……ぇ……?」
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