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第75話

車は僕の家の前で止まり降ろされた。 頭の中の整理が追いつかないまま玄関のドアを開けると見慣れた靴があり、僕は慌てて靴を脱いでリビングに向かった。 「おかえり、柊」 「創士さーーんぐっ、ゴホッ」 無理に咳を止めようとしたが止まらなかった。 「無理に喋るな。治りが遅れるぞ」 「ゴホッ……はい」 背中を優しくさすってくれる手の暖かさに、小さく返事をした。 「夕飯、今から作るのもなんだからピザを取ったんだが、食べれそうか?」 創士様はピザ屋のチラシでマルゲリータとポテトを頼んでもう少しで届く予定だと話してくれ、僕は頷いた。 それから10分ほどで届いたデリバリーのピザとポテトにインスタントのスープを用意して食べた。 僕はピザを2枚しか食べることができなくて、残りは創士様が頑張って食べてくれた。 「咳、また酷くなってきたな?」 「創ーーケホッ、ケホッ」 お風呂から上がってきた創士様は、リビングに居た僕の隣に座り咳き込む僕の背中をさすってくれた。 だいぶ良くなってきた筈の咳は、帰りの移動中にまた酷くなった。 少し喋るだけで喉に詰まりを感じて咳き込んで、まともに話すことができない。 「だから、もう寝ろと言っただろ」 そう言う創士様に嫌だと頭を振る。 創士様は先にお風呂に入った僕に「もう寝なさい」と言ってくれたけど、今は1人になりたくなかった。 だから、少しでも創士様と一緒にいたくてリビングで待っていた。 そう言いたかったけど、言葉より先に咳が出てしまい言えなかった。 「なあ、柊。もう少し起きていられるなら、話をしたいんだが、いいか?」 「?」 「お前は無理に話さなくていいよ」 僕は頷いた。 創士様は僕の背中から手を離し、左手を取り指を絡めて握った。 「前に『ちゃんと話がしたい』と言ったこと覚えているか?」 僕は頷いた。 思い当たるのは、8月のおじいさんとおばさんのところに行った時に泊まった旅館で創士様が言ったことだ。 本当は創士様が出張から帰ってきた時に話そうと約束していたが、創士様も僕も色々あって出来ずじまいだった。 きっとそのことだろう。 「柊は咳が出るといけないから無理に話さなくていい。その代わり、頷くか頭振って答えて欲しい」 僕は頷く。 少しの間があって創士様は息を吐いてから話し始めた。 「まず、先に俺の話からさせてくれ」

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