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第84話

「柊はさ、俺に隠してることない?」 口に含んだアイスのカフェラテが危うく気管に入りそうになった。 慌てて紙ナプキンで口元を拭く。 「えっ、なんで?」 「いや、なんとなく」 田村はそう言うとコップに口を付けてコーラを一気に半分くらい飲んだ。 たぶん、田村には気付かれている気がする。 これ以上、ただ黙っているのは難しいのかもしれない。 僕は落ち着かせるためストローを使って二口飲んだ。 「あの……色々説明ができなくて……。もう少ししたらちゃんと話すから……あの」 「わかった。なら待つ」 「えっ」 ポカンと口を開ける僕に、田村はニッと笑った。 「だーかーら。あとでちゃんと話してくれるんだろ?なら、待つよ。あ、でも俺こう見えて意外と短気だから、いつまで待てるかは分からないけどな」 「ふははっ」 戯けて笑う田村に釣られて僕も笑った。 バイトに行くという田村と別れて、僕はだいぶ慣れてきた門をくぐって外に出る。 背後で靴音が聞こえて振り返ろうとすると腕を掴まれて引っ張られた。 「わっぷ」 腕を引いた人の胸に顔が当たると「みーつけた」と声が聞こえ身体が強張り、それはすぐに震えに変わった。 顎を掴まれ上を向かされ目が合う。 「柊、探したよ。こんな所使ってたんだね」 「ぁ……逢坂、様」 「ちょっと時間いいかな。話があるんだ」 逢坂様はそう言うと、僕の返事を待つことなく肩に手を回し、引き摺るように近くに止めてあった車へと連れていった。

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