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第90話
広いベッドで目を覚まし起き上がると全身の怠さと頭痛に襲われた。
喉の痛みと渇きにサイドチェストに置かれたペットボトルを取り水を一口飲む。
昨夜、逢坂様は言葉通り、優しく丁寧に僕を抱いた。
それは最初だけで、その後はいつも通り独りよがりなものだった。
酔いが回り意識が混濁して抵抗できない僕の身体は与えられる快楽と苦痛にただただ声を漏らした。
お酒に何か混ぜられていたのかもしれないと一瞬思ったがもうわからない。
わかるのはこの身体に残された痕と微かに残る記憶。
逢坂様は、意識がなくなった僕を何度も揺り起こしては中をかき混ぜ何度も注ぎ込んだ。
飽きるまで抱き潰され放置された身体はベトベトしていて気持ち悪く、少し力むだけで後孔からはコポコポと残滓が溢れた。
そんな身体に残された痕とぐしゃぐしゃに乱れたベッドを見ていたらどうしようもなく笑えてきた。
逢坂様の言葉に簡単に騙された危機感のなさと、抱かれて甘い声を上げた快楽への弱さに。
あの時、もう創士様以外に触れられるのは嫌だと本気で思った。
でも、堕ちてしまえば勝手に受け入れてしまう身体に調教されていたと今回気づかされた。
こんな身体では、創士様に見捨てられても仕方がない。
ヒリヒリと痛む喉を押さえながらひとしきり笑うと、重い身体を引き摺りバスルームに向かった。
念入りに中と外を綺麗にしてバスローブを羽織って出ると、逢坂様がソファーに座りコーヒーを飲んでいた。
「柊、おはよう。お腹が空いてると思ってルームサービスを頼んだよ。おいで、サンドウィッチを一緒に食べよう」
手招きをされ逢坂様の隣に行くと、その足元にある紙袋を素早く掴み後退した。
「柊?」
「いりません。講義があるのですぐ帰ります」
紙袋から服を取り出すとバスローブを脱いで着替える。
舐めるような視線を感じるが、そんなことは構っていられない。
「車で送るから焦らなくてもいいよ」
「お断りします。そもそも約束が違います」
「どうして?あんなに気持ち良さそうによがってたじゃないか」
「僕の身体がそういう風に出来ているからです。それが貴方じゃなくても気持ちが良ければ誰にだって鳴きますよ」
自分の口から出た自虐的な言葉にショックを受けたがまた笑えてきた。
着替え終えると、紙袋の底から靴とバッグを取り出した。
「柊、スーツも持って帰りなさい。それはもう君のものだ」
逢坂様は僕に近づき僕の手を取ると、昨日着たスーツが入った袋を待たせた。
それを受け取るとベッドに放った。
「いりません。僕はもう貴方からは何も受け取りません」
「はっ、強気だね。でも僕は君を手に入れるまで諦めないよ。どんな手を使っても君を手に入れるから覚悟しててね」
「っ!失礼します」
薄ら笑みを浮かべ頬に触れようとした手を振り払うと逃げるように部屋を出た。
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