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第91話

一度帰宅して、服と荷物を変えると急いで大学に向かった。 開始ギリギリに教室に滑り込むと、席はほぼ埋まっていて、いつも僕が座っている席も他の生徒が座っていた。 その隣には田村が居た。 チラッと僕の方を見たが、すぐ視線を前に向けた。 直後、講師が教室に入ってきたため、僕は慌てて後ろの空いている席に座った。 講義が終わるとすぐに教室を出たが、田村は追って来なかった。 そのことに少しホッとしたが、それを上回る寂しさを感じた。 結局、その日は田村から声をかけられることも、僕から田村に声をかけることなく1日が終わった。 帰りに駅前の商業施設に寄り、アルバイト先として目星をつけていた書店に行くと、アルバイトの募集の張り紙は撤去されていた。 僕のアルバイト探しはふりだしに戻った。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 翌日。 「あれ、バイト探しているの?」 大学内の図書館でアルバイト情報誌を見ていると、顔見知りの司書さんに声を掛けられた。 「駅前の本屋さんに応募しようと昨日寄ったらもう募集締め切られてしまって……」 「あちゃー。まあ、こういうのってタイミングとかあるからね。あと、ご縁なところもあるし」 「そう、ですね」 「でもよかったわ」 「えっ?」 驚いて司書さんを見ると、嬉しそうに笑って言った。 「ねぇ、図書館(ここ)でバイトしない?」 短期ではあるが、思わぬところで僕のアルバイト先が決まった。

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