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第96話

※創士視点 翌日。 早めに仕事を終わらせて帰宅すると、家政婦が玄関で出迎えてくれた。 「こんなお早いご帰宅は珍しいですね」 「ちょっと疲れてな」 本当は、昨日思いがけないところで柊が逢坂と一緒にいたことが気になって、寝不足気味だったからだ。 着替えてキッチンに行くと、家政婦が早く帰ってきた俺のために慌ただしく夕飯の準備をしていた。 「何か手伝おうか?」 「あら、ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えて、サラダの準備してもらえますか?1人分ですから出し過ぎないよう気をつけて下さいね。出し過ぎたら責任もって食べてもらいますからね」 「ははっ。わかったよ」 俺は手を洗い、レタスの玉から数枚剥がすと冷水で洗い適当なサイズにちぎってザルに上げた。 「あ、そうそう。来週は柊さんのお誕生日ですね。創士さん、柊さんへのプレゼントは用意しました?」 「……あ……いや……」 本当はもう用意している。 ずいぶん前から準備をしていたが、柊は出ていってしまったため、もう渡すことができないと諦め、寝室の机の一番下に仕舞い込んでいた。 「早く用意して下さいね。……あ、あとお花も」 「花?」 「そうですよ。創士さんのお誕生日のお花のお返しをしないと」 誕生日翌日、リビングテーブルに飾って2人でケーキを食べたことを思い出す。 白の花がいくつか咲いていた可愛いらしい花だった。 「あのお花、ホトトギスっていうんですよ」 「ホトトギス?鳥の?」 「花弁の模様がホトトギスの胸の模様に似ているから付いた名前なんですが、柊さんがご用意したのは真っ白な花でしたね」 「ああ、とても可愛らしい花だった」 思い出して笑う俺に、家政婦がふふふと笑った。 「創士さん、ホトトギスの花言葉ご存知ですか?」 「花言葉?……いや、知らないな」 家政婦は手を止め体ごと俺に向いた。 なんとなく俺も手を止め家政婦に向いた。 「花言葉は……ですよ」 家政婦は顔を寄せ俺の耳元で囁いた。 目を見張る俺に家政婦は微笑んだ。 俺は……。 「出掛けてくる」 「はい。いってらっしゃいませ」 俺はキッチンを飛び出した。

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