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第105話

「これって……」 「ペアリングだ。柊と俺の」 驚いて見上げると、頬を赤め恥ずかしそうな目と合った。 「つけて、くれるか?」 「……はい」 創士様は小さい方のリングを僕の左の薬指に通すとピッタリと嵌った。 創士様は僕の指に収まったリングを親指でなぞりキスをした。 それは何か特別な儀式のように見えた。 「僕も着けていいですか?」 ケースの中のもう一つのリングを取り出し、今度は僕が創士様の左の薬指に通し、そこにキスをした。 「ふふっ。なんか、結婚式みたい……」 創士様の薬指にピッタリと収まったリングを触りながらつぶやくと、頭上にふっと息がかかり手を握られた。 「なあ、柊が俺の誕生日に用意した花。……あれは……あの花言葉はお前の気持ちと受け取っていいか?」 「あっ」 「"永遠にあなたのもの"だよな?家政婦に教えてもらった」 言葉にされると恥ずかしい。 でも、その通りだ。 僕は恋心を自覚した時からずっと……。 これからもずっと……。 永遠にあなたのものだと思っているから。 「……はい」 頷くと創士様はとても嬉しそうに、空いた手で花瓶に生けてあるゼラニウムを一輪手に取った。 「じゃあ、赤のゼラニウムの花言葉は知ってるか?」 「いいえ」 赤いゼラニウムを差し出され思わず受け取る。 大きな手が僕の頬に触れると心臓がドクンと大きく鳴った。 「"君ありて幸福"だ」 吐き出すはずの息を飲み込んだ。 高鳴る心臓がどんどん速くなる。 胸は苦しいのに赤い花を見ると幸せを感じる。 「いつか……」 「え……」 視線を戻すと至近距離で真っ直ぐに僕を見る目と合った。 「いつか挙げよう、式」 「……はい」 目を閉じると唇に創士様の唇が触れた。 そのまま暫くの間、触れるだけのキスをした。

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