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第106話
「さあ、ケーキを食べよう。柊には俺の手ずから食べさせてやるよ」
「ええっ、じ、自分で食べれます」
そう言う僕の言葉には耳を貸さず、創士様はケーキに直接フォークを突き刺すと、一口分を掬って僕の口の前に運んだ。
「ほら、あーん」
「いやいやいや、自分で食べまブッ……」
僕の口に容赦なくケーキを突っ込まれた。
咀嚼すると、フワフワのスポンジに甘い生クリームと甘酸っぱい苺が口の中いっぱいに広がる。
「ん、美味しい」
「それは良かった」
素直に感想を述べると、創士様は嬉しそうに笑った。
でも、今日の僕はやられっぱなしじゃない。
「今度は僕が食べさせます」
創士様の手からフォークを奪うと、僕が食べた倍のサイズのケーキを掬った。
「はい、あーんして下さい」
僕の行動をキョトンとした目で見た創士様は、ふっと笑った。
「?」
「いや……なんかコレって"ファーストバイト"みたいだなって思って」
「ファーストバイト?」
「ああ、結婚披露宴でケーキ入刀後に新郎新婦様が互いにケーキを食べさせ合う儀式のことだ。まあ、俺たちは入刀はしなかったけど」
創士様はケーキを一口で頬張るとニヤリと笑った。
結婚式も披露宴も出席したことのない僕には、新郎新婦が結婚披露宴でケーキ入刀することは知っていても、お互いにケーキを食べさせ合う儀式のことは知らなかった。
「……あと、ケーキの大きさは愛情の大きさでもあるらしいぞ」
「わわわわわっ!そんなことっ、僕知らなかっ……」
「はははっ」
「もうっ、創士様の意地悪っ」
僕がそう怒ると笑っていた創士様が急に黙り込んだ。
あれ、怒った?
怒らせるようなことを言ったのは創士様なのに。
「あ、あの、創士さーー」
「なあ柊」
急に黙った創士様は僕の名を呼ぶと真剣な目で見た。
「えっ、はい」
「その……お前はいつまで俺のことを『創士様』って呼ぶんだ?」
「へっ?」
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