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第115話

沙耶華視点① 「お祖父様、どういうことですか?何故、婚約破棄なんですか?」 「沙耶華、創士くんと約束をしていたからだ」 婚約破棄を言い渡された翌日。 両親に宥められても収まらない怒りを訴える私にお祖父様は冷めた目を向けた。 私の預かり知らぬところで勝手に決められた縁談。 はじめは反発した。 仕事も順調で自立した生活ができていて、結婚と出産は自分のタイミングでするつもりだった。 なのに、この縁談で仕事から外された。 仕組まれたお見合いの場で会った男は、見た目が良く血筋も申し分なかった。 しかも、数年前に立ち上げた会社も順調に業績を上げている。 私に興味を持たない以外はたぶん最高の相手だ。 気乗りしない私にお祖父様は後継となる子どもを産めば自由にしていいと言い、私はそれを受け入れた。 夢見る少女はとうに卒業した。 愛のない結婚。 愛のないセックス。 それを受け入れなければいけない立場に自分がいることも理解している。 ならば、せめてそれなりに良好な関係は築きたい。 私も好きになる努力をする。 だから、少しでも私を好きになって欲しいと……。 頑張った、のに。 「勝手に決められた縁談で仕事を取り上げられ、それでも受け入れたのに……。勝手に破棄された私の気持ちを考えて下さい!」 私は振り回され傷つけられた。 これは正当な言い分であり、謝罪だけでは済まされるものではない。 「縁談を勝手に進めたことは謝罪する。すまなかった。だがーー」 私に頭を下げたお祖父様が顔を上げ再び見せた顔に背筋が凍った。 「お前は誰かの気持ちを考えたか?」 「……え……お祖父様、何を」 「沙耶華は、叔母や……そして柊くんの気持ちは考えたのか?」 叔母に柊を会わせたことをお祖父様が知っていた。 驚いて両親を見るが2人も驚いていた。 「執事から報告を受けた。何故そのようなことをした?」 「何故……て。叔母様に実の息子を会わせたことの何がいけないのです?」 善意でしたことの何がいけないのかわからない。 そう言うと、背後の両親は息を呑み、お祖父様は深いため息をついた。 「柊くん。彼はあの子が産んだ子ではない。あの子の子はすでに亡くなっている」 「……は?」

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