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第2話
「大丈夫だって言うから、戻ってきたわ。」
そう言いながら部屋の中に戻る。
しかし、聞いているはずの相手の返事がない。
「櫂?」
部屋の真ん中まで入って、周囲を見渡す。
ガチャと鍵のかかる音がして扉を振り返ると、こちらを向きながら後ろ手で櫂が鍵を閉めていた。
「おい、何をやっているんだ?」
鍵を開けようと扉に向かうと、櫂が俺と扉の間に立ち塞がった。
「ダメだよ、せんせー。開けないで。」
俯いた櫂の肩を掴んでどかそうとするが、櫂は頑として動こうとしない。
「男子とは言え、まずいんだよ!こんなところに二人きりでとか…今は何を言われるかわかんねぇんだからさ。ほら、冗談はやめて、どけって。」
なんとかどかそうとするが、櫂は頭を振るだけで俯いたまま。
「なぁ、嫌がらせなら他でしてくれよ。なぁ、櫂?」
俯く櫂の顔を覗きこむと櫂の口元がニヤリと笑うのが見えた。
ヤバい!
瞬間的に掴んだ手を離して櫂から離れようとしたが、気が付くのが遅かった。
ドンと胸を両手で突かれ、逃げようとした変な体勢のままでバランスを崩し、床に倒れ込んだ。
「櫂っ!」
すぐに立ち上がろうと上半身を起こす前に櫂が俺に馬乗りになる。
「おい、これはヤバいって…なぁ、今ならまだ冗談で済むから…なぁ、櫂?」
なんとか櫂のことをどかそうと身を捩るが、太腿でグッと腹を挟まれ動き辛い。
いくらなんでもこれはマズすぎるだろ…
じっと黙ったままの櫂を教師スキルを駆使して説得するが、何を言っても聞いているのかいないのかすらわからないくらいにまったく動きがない。
ただ、力だけはずっと入ったままで、俺も違う意味で動くことができない。
唯一動かせる口での説得もまったく効果なく、どうしたらいいのか考えあぐねていた。
「櫂、お前は何がしたいんだ?したいことがあるならさっさとしてくれよ…」
そう言って、もういっそどうにでもなれと横を向く。
どうせ、一発殴りたいとかそんなんだろう…それならさっさと殴ってもらって、今すぐにでもこの部屋から出たい。
「櫂、したい事して、さっさとこの部屋から俺を出してくれよ。」
「本当に?」
今までつぐみにつぐんでいた櫂の口がようやく開いた。
「しなきゃ出してくれない気なんだろう?だったら、さっさとしてくれ。」
「せんせー…こっち向いて。」
殴るのに、わざわざ目を合わせるのか…大分、恨まれてるみたいだな…はぁ。
ため息をつきながら、言われた通りに顔を正面に向かせた。
「これでいいか?」
「うん。じゃあ、するよ。」
そう言われて、拳が飛んでくるのはさすがに見たくないので、ぎゅっと瞼を閉じた。
しかし、頬に受けるはずの熱い痛みがいつまで経っても来ない。
おかしいなと薄目を開けようとした時、ダメと言う櫂の声と同時に櫂の掌が俺の目の上に置かれて一瞬で目隠し状態になった。
なんで、目隠し?
思う間もなく、柔らかくて温かいものが俺の唇に触れた。
これ…って…!
顔を横に向けようとするが、目の上に置かれた手は思った以上に力があり、いくら何をしても動けない。
体も顔も完全に櫂の支配下にあり、されるがままに俺は櫂にキスされ続けていた。
しかし、それは子供にする頬や頭へのそれと変わらず、ムズムズとした熱がたまりはするだけで何も立ち上がることはなかった。
だが、さすがにキスもろくにできない男子高校生。こんなキスだけで櫂の方の息子はすでに俺の腹にその硬さがわかるほどに反応していた。
しかし…
「キス…下手すぎだろ…」
つい、声が出ちまった。
「…初めて…だから…」
真っ赤な顔をしてそんな可愛いことを言うもんだから、それまでは落ち着いていた俺の息子が思いもかけずにピクンと反応してしまった。
「せん…せー?!」
顔に置いてあった手が、今度は下半身に触れる。
「おい!初めてでそういうところを触るな!」
「せんせーが、反応してくれてる…俺で勃ってくれてる…なら、いいよね?」
お前、人の話を聞けといつも言ってるだろうが!と言いそうになって、え?となる。
いいって、なんの事だ?
「櫂、何をするつも…りーーーーーー!?」
いきなり、ズボンと下着を引き摺り下ろされ、大声が出てしまった。
いや、そんな悠長な事を言っている場合ではない。
「櫂、お前何をしようとしてるんだ?」
すると櫂はニコッと微笑みながら、俺の息子を扱き出した。
「くぅうっ!やめ…ろって…ぅうぅん…っぅあっ!」
ここ最近は恋人もなく、一人でする時間もなかったので、直接触れることすら久しぶりの俺の息子は、辿々しくも人の手による刺激に過剰に反応し、身体中の感覚が快楽へと流れていってしまうのを止める事はできなかった。
「もう…はな…せ…離して…くぅ…っれぇえーーーー!」
ドクンと大きく膨らんで止められずに、出るにまかせるがまま出しまくった液体を、櫂はその手に受けるとぺろっと舐めてごくんと喉を鳴らした。
「おい!舐める…いや、飲むなって!」
止める前に手で受けたそれをズズっと飲み干すと、俺の胸に顔を埋めた。
「俺の気持ちわかってくれた?」
「お前の気持ち?」
なんの事だか分からずに聞き返す。
「好きな人のセー液は飲むんだろ?だから、それが俺の気持ちって事。」
「はぁ?!」
素っ頓狂な声が出てしまった。
だが、そんな話は俺が生きてきて約30年、一回も聞いた事がない。
「どこで教えてもらったんだ?」
尋ねる俺にキョトンとした顔でAVと答えた櫂の顔を見ながら、はぁああああああああ!と、とてつもなく長いため息が出た。
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