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第3話
俺の長いため息をキョトンとしたままで聞いていた櫂に問いかける。
「お前…普通さ、告白する前にセー液飲むような事するか?」
「え?だって、まずは体の相性って言うじゃん!」
「体の相性は、まあ大事だけどさぁって、俺が言ったらまずいか…いや、そうじゃなくて、まずは俺から降りろ!」
櫂を退かそうと身体を動かそうとするが、全く動けない。
「やだよ。だって、せんせー、自由になったら逃げるだろ?」
「い…いや、そんな、事はない、ぞ!」
当たり前だろう!と言いそうになるのを我慢して、しどろもどろになりながらも嘘をつく…しかし、俺って嘘が下手すぎだよなぁ。
自分で言ってて、こんな嘘に誰が引っかかるんだよと苦笑いする。
「じゃあ、約束してくれる?」
櫂が小指を出す。
いたよ、信じる奴。
ともかく、このチャスを逃すなとばかりに俺も櫂の前に小指を出した。
「よしっ!約束な!!」
小指を絡めると本当に俺の上から櫂が退いてくれた…。
こんな事をされてもやはり可愛い生徒、こんなに騙されやすくて大丈夫かとマジメに心配にはなるが、今の所の最重要課題である、俺の社会的抹殺の危機から逃れなければ!
どいた瞬間に引き摺り下ろされたもの達を秒で上げて、扉までダッシュ!
鍵さえ開けられれば俺の勝ち…だな。
頭の中でシミュレートしてよしっと心の中で頷いた。これならいける…あとはタイミングだ。
櫂が俺の体から降りて、離れた!
俺は一瞬を見逃さなかった。
立ち上がった瞬間にはすでにズボン達は腰に上げられ、ぽかんとしたままでいる櫂の横を扉に向かって走り抜けた…はずだった。
俺のシミュレートは確かに完璧だったんだが、入れなければならなかった櫂の情報が全く、一つも入っていなかった。
櫂の横を走り過ぎようとした俺の腕をこいつは焦る事なく掴み、一瞬止まりかけた俺の足の浮いたところに自分の足を飛ばしてきやがった。
うわっと声が出て目をぎゅっと瞑るが、倒れる直前に腕を引っ張られ、そのまま静かに床に寝転がされた。
「お前、柔道部だっけ?」
「高校では帰宅部だけど、中学までは地元でちょっとね。」
そう言いながら、再びヨッと言いながら俺に馬乗りになる。
「だからさ、乗るなよ!いや、俺も悪かった。今度はちゃんと話聞くから、ともかくどいてくれないかな?」
櫂がううんと首を横に振る。
だよなぁ。
さっきの今で簡単に退いたら、マジでこいつ大丈夫か?案件だもんな。
一応、少しは人を疑う心を持ち合わせているらしいことに、教師としてはほっとする。
それはそれとして、さてこの状況をどうするか…ちょっと待てよ。好きとか何とかって言っていたような気がするけれど…俺を好きって事か?櫂が?
「櫂、好きって…誰をだ?」
「せんせーに決まってるじゃん。だから、せんせーのセー液飲んだんだよ?」
今更何を聞くんだろう?って当たり前みたいな顔をして言わないでくれ。
最悪じゃないか…告白されて、セー液飲まれて…って、逆か…って、今はそんな事はどうでもいい!ともかく、好きだとか言われて、下半身弄られて、どう考えたって俺の方が被害者なのに、これがバレたらワイドショーでは「30代男性教師、男子生徒に猥褻行為で逮捕!」ってデカデカと画面いっぱいに出されて、俺の事をそんなに知らんような生徒が、「そんな事をする先生には見えなかったけれど、僕も狙われていたかもって思うと怖いし気持ち悪いです」って、モザイクのかかった顔と機械で変えられた声でインタビュー映像として流れるんだろうけど、お前なんか知らねぇし、狙うとかバカか!って、いや、まだ流れてもいない見ず知らずの生徒に怒っても仕方ないか。
そんな事よりも、ともかくこの状況はどのみち俺が加害者、言い訳も聞かれず、警察案件…だよなぁ…本当に勘弁してくれよ。
「なぁ、櫂。俺が好きって言うなら、俺の事を少しは考えてくれよ。お前とこんな事してるの、もしも見られたら俺は教師を辞めて警察行きだぞ。」
「だから、鍵をかけたよ?せんせーが重そうに資料を持っている時がいいって言われてさ。しかもこの部屋なら鍵もかかるしって。」
「誰に言われたって?」
「さっき、一緒にいたすぐる。それとしょうも色々と考えてくれてさ。あいつらとは小学校からの柔道仲間なんだ。だから、俺がせんせーが好きで告白したいって言ったら、色々とアドバイスくれて。本当にいい奴らだよね。」
あの双子に感じた違和感はこれか。
話を聞いてようやく合点がいった。
全ての元凶はあいつらか…。ともかくこの部屋から出て…って、なんかゴソゴソと下の方でって…
「だからズボンを脱がすな!」
再び、櫂の手によって下半身が空気に晒された。
「それでね、せんせー。カラダの相性、知りたくない?」
なんか櫂の目が熱っぽくうるうるとしている。
これは、絶対にヤバいやつだ!マジで、警察行きになってしまう…
「いや、俺はまだ知りたくはないぞ。そう言う事は好き合って、ある程度の時間をおいてだな…って、お前まで何で脱いでんだよ?!」
俺の体を膝でぐっと挟んだまま、自分の履いているものをずり下ろした。
すでにかたく勃ち上がったモノがぷるんと飛び出し、我慢できないように櫂が自分の手でそれを擦り出す。
「せ…んせー…俺っ、俺…もう、我慢出来ないっ!」
そんな熱っぽい声で俺を煽らないでくれ!
そんなモノを見せられて、俺だって我慢するのがやっとなんだ…
それなのに櫂は俺の心を知ってか知らぬか、俺のモノを掴んだ。
「せんせー…」
「櫂…」
俺だって、もう我慢の限界だ!
「入れていい?」
「入れてくれ!」
同時に発した言葉に2人でえ?と顔を見合わせる。
「せんせーも入れられたい方なの?」
「櫂も入れられたい方なのか?」
2人してがっくりと肩を落とす。
「せんせー、俺、もう辛くて無理だよぉ。後ろもすぐる達に手伝って貰って、ちゃんと準備
してきてて…だから、さっきからもう辛くて…助けてよぉ、せんせー。」
ぐりぐりと櫂が俺の腰に自分の尻を押し付ける。
「そんなこと言ったって、俺はずっとされる側で、した事ねぇんだよ…今更したいとも思わないし…それに俺だって、お前に変に煽られたから後ろの疼きが…あぁ、くそっ!」
二人で相手のモノをごくりと喉を鳴らして見るが、それが自分の辛さを解放してくれるモノではないと言う事実に愕然とする。
「櫂、若いんだし、入れてみたら気持ちいいかも知れないぞ?もうこの際、許してやるから、俺に入れてみないか?」
櫂に頼んでみるが、奴は嫌だと言うように首を横に振った。
「俺だって、せんせーに愛されたい!せんせーこそ、俺で童貞捨ててみない?」
二人で顔を見合わせて、やっぱり無理かとため息を吐く。
と、ガチャリと扉の鍵が開く音がして、ゆっくりと扉が開いた。
「なっ…ヤバいって!櫂、退いてくれ!」
「何で、お前達?」
扉を見ていた櫂の言葉に、バタついていた俺も扉の方に目を向けた。
そこには先ほど廊下で別れた双子のすぐるとしょうが立っていた。
「お前達、何で入ってこられたの?」
櫂の問いかけに、片方が扉に再び鍵を閉め、片方がここの物と思われる鍵を揺らしてこちらに近付いて来た。
「これ、何だと思います?ここの合鍵…この前、作っておいたんです。それで、うまくいき…ませんでしたか、やっぱり。だって、二人共挿れられたい側でしょう?だから、僕達が戻って来てあげたんですよ。」
そう言って、駆け寄って来た相手を見ると、なぁと笑い合って、俺と櫂を見ながら二人は舌なめずりした。
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