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幼馴染み_2

手にしていたビールジョッキをテーブルに置き、薫は小さく溜息を吐いた。 「……αはΩのフェロモンに当てられる、番を持たない限りはね。嫌だろ、普通さ。自分の好きな人が他人に欲情するなんて」 「そうなったら俺が責任持って処理するから安心していい。任せてくれ。そう言った経験はないが、練習して絶対満足させる」 「練習って…………僕が嫌なんだよ。僕は好きな人は大切にしたい、そんな欲情の捌け口みたいなことして傷付けたくない」 「俺なら頼ってくれた方が嬉しい。そんな事で傷付いたりしない」 更に追加された溜息の後、薫は徐に立ち上がる。 「もう帰るのか?」 「トイレだよ」 店の奥に向かう背中を見ながらビールを流し込む。 広く男らしい背中。スーツがよく似合う。 子供の頃は俺の方が大きかったのに、いつの間にか逆転されていて……恋心は冷めるどころか増すばかりだ。 背中が見えなくなり、大人しく待っていようとメニュー表に目を向けた時、隣からの笑い声に気が付いた。 薫が座っていた右隣とは反対側。ちらりと目線を左に寄せれば、腰掛けていた男と目が合う。 男の笑いは俺に向けられていたようだ。 「……何だよ?何笑ってる?」 「ふふ、ああ、ごめんね?こっ酷く振られちゃったなって思って」 男はどうやら俺達の会話に耳を向けていたらしい。 「聞き耳とは悪趣味だな」 「ごめんってば。そんなに怒らないで?振られちゃった者同士仲良くしようよ、ね?」 コツンと音を立てたのは重なったビールジョッキ。 不本意な乾杯を酌み交わした男は、それを煽り、喉仏を上下させてビールを流し込んだ。 「……お前も振られたのか?」 「そうなんだよね。そりゃあもう何十回も振られてるよ」 「そうか……同じだな」 「君とは仲良くなれそう。俺は榛葉、榛葉 章(しんば あき)」 榛葉と名乗った男をよく見れば整った顔立ちをしている。 笑顔はなんか胡散臭いが……。 「……お前ぐらい顔がいい男でも振られる事あるんだな」 別に他意は無く思った事を口にしただけだが、榛葉は数回瞬きを繰り返し、次の瞬間には声を上げて笑った。 「あはは、君面白いね。ねえ、名前は?」

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