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幼馴染み_3
店員に追加のビールを注文しながら榛葉は問う。
「汐野 壮史郎」
「壮史郎くんね、改めて宜しく」
差し出された手を握り返して良いものかと悩んでいたら、ちょうど薫がトイレから戻ってきた。
「おかえり」
「うん…………知り合い?」
頬杖をついて身体をこちら側に向けた榛葉を一瞥して、薫は俺に尋ねた。
「いや、今知り合った」
「どうも。失恋仲間の榛葉です」
俺に続いて自己紹介を始めた榛葉に軽く会釈を返した薫は、こっそりと耳打ちをしてくる。
「何か笑顔がかなり胡散臭いけど大丈夫なのか?」
「それは俺も思った。でも一人みたいだし、話すぐらいならいいかって」
「…………壮史郎って昔からそういう所あるよね」
「?」
「お人好しというか警戒心がないというか……知らない人について行くなよ?」
まるで子供のような扱いに、反論を言いかけた所で榛葉が「そっちの彼は何て名前なの?」と話に割って入った。
「有嶋です。有嶋 薫」
「俺は榛葉 章、宜しくね」
どうも、と返した薫はかなり愛想笑い。
「それにしても有嶋くんはこんな可愛い子を振るなんて、酷な男だね」
「なっ…………壮史郎、喋ったのか?」
薫に詰め寄られ、俺は慌てて首を振る。
「ち、違っ、俺は言ってな――」
「――そうそう。たまたま話が聞こえてきただけだよ。だから壮史郎くんに俺から声掛けたんだ。ちょうど俺も好きな人に振られちゃったからさ」
ね?と向けられた榛葉の視線に黙って頷く。
「壮史郎くんはさ、有嶋くんのどんな所が好きなの?」
「え…………」
薫の好きな所……。
「いや、そう言うのは僕のいない所で話す事なんじゃ――」
「いいじゃないか。ぜひ聞きたい」
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