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幼馴染み_4
嫌がる薫を他所に俺は意気揚々としている榛葉の方へと向き直った。
「薫の好きな所は沢山ある。まず顔が良い。小さい頃は女の子と見間違えてしまうほど可愛らしかったけど、今はどこに出しても恥ずかしくないぐらいイケメンで格好いい。俺はどちらも好きだ」
俺の言葉に榛葉はまじまじと薫を見つめ、「うん、確かにイケメンさんだ」と笑う。
「そうなんだ、イケメンなんだ。アンタ、なかなか見る目があるな」
「……何で壮史郎が胸張るんだよ」
薫からはテンションの低い声が聞こえてきたが、俺の口は止まらない。
「綺麗な髪も好きだ。元々色素が薄いからこれで地毛なんて綺麗だと思うだろう?触るとふわふわで、撫で心地がいい」
言ったそばから撫でたくなったが薫が止めろと目で訴えてくるので自制する。
「あとは目も好きだ。話す時真っ直ぐ見てくれる。笑うと細まって印象が優しくなる」
「ふふ、沢山あるんだね」
「ああ、まだまだあるぞ。努力家な所も好きだ。周りはαだから出来て当然だと言うが、薫は陰でちゃんと努力してる。勉強もスポーツも、全部薫の努力の賜物なんだ。それから可愛い所もある。俺のイチオシのエピソードは――んぐっ」
溢れ出る好きな所を堰き止めたのは、恥ずかしそう顔を赤らめた薫の手だ。
「もういい、止めてくれ。聞いてる僕の身にもなってくれよ」
「えー、もう止めちゃうの?せっかくノッてきた所なのに」
「もう十分でしょう?これ以上話すなら僕は帰る」
ご機嫌斜めになった薫は俺の口元から手を離すと、残りのビールを一気に飲み干して、席を立った。
「あ、待って……俺も帰る」
薫の背中を追い掛けて慌てて立ち上がると、榛葉に手を掴まれた。
「な、何?早く行かないと薫が……」
「ごめんね、今日は楽しかった。また、会おうね」
手が離れた拍子に俺は走って薫を追う。
最後に笑んだ榛葉の顔がやけに脳裏に焼き付いた。
……何だ?アイツの笑顔、何か嫌だ。怖い。
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