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幼馴染み_6
side α
汐野 壮史郎は僕の大切な幼馴染みだ。
子供の頃の僕はとても華奢で、まるで女の子のようだと虐められることも多かった。そんな僕を壮史郎はいつだって守ってくれて、僕は壮史郎の事が大好きだった。
真っ直ぐで強くて、大切で大好きで。
そんな壮史郎が僕の前で一度だけ泣いた事がある。
それは小学校に上がる少し前の出来事だ。
幼稚園の昼寝の時間、僕は壮史郎といつものように手を繋いで隣に並んで眠っていた。
心地良い夢を見ていたらバタバタと足音が騒がしくなって、部屋に入ってきた先生が壮史郎を起こすと、その身体を抱えてどこかへ連れて行ってしまった。
僕は寂しくて行かないでって追い掛けたけど、他の先生が「今は我慢しようね」と僕を引き止め、遠ざかって行く背中をただ見つめた事を覚えてる。
それから暫く壮史郎の姿を見ることはなく、あの日壮史郎のご両親が事故に遭い亡くなってしまったのだと知ったのは、小学生になってからのことだった。
幸いにも壮史郎は近所に住んでいた親戚の家に引き取られ、学区は変わる事なく同じ小学校へと進学出来て。
僕らは変わらず、ずっと一緒にいた。
そしてあの日、「家に帰りたくない」と溢れた壮史郎の珍しい弱音と涙と、合わせて聞いた彼の願いを今でも僕は覚えている…………。
僕のヒーローが望んだ、たった一つの願いを。
「――おはよう。今日は天気がいいぞ」
「…………壮史郎、朝からインターフォンを連打するのは止めてくれ。そして今何時?」
「土曜の朝八時だ」
腰に手を当てて胸を張る壮史郎に対して、僕は目頭を押さえて項垂れた。
「そう、土曜。僕らの週二って言う数少ない休日だろう。なのに何だってこんな朝早く起こすんだ……」
「…………?全然早くないだろう?もう八時だ」
「壮史郎は早起き派だけど僕は夜更し派だって知ってるだろう……?」
それに昨日の今日で顔見せに来るとは思わなかった。
割と落ち込んで帰ったように見えたから。
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