7 / 17
幼馴染み_7
「で、こんな朝早くに来た理由は?」
「……俺、昨日帰ってから色々考えた。薫に言われた事とか」
「…………」
壮史郎の気持ちを迷惑だと思った事はない。
むしろ本当は……だけど、“――壮史郎は、昔から僕の大事な幼馴染みだ。それはずっと変わらない、今までもこれからも。一緒に居れるよ、幼馴染みでも”そう告げた言葉にも嘘はない。
「壮史ろ――」
「だからデートしようと思う」
「…………え?」
「俺は幼馴染みって関係に胡座を掻きすぎてた。結果、薫が恋愛対象として俺を見てくれないんだって思った」
「え、いや……」
「だからまずはそう見てもらえるように頑張る事にした」
ぜ、全然めげてない……。
「と言うことで今日はデートに行こうと思う」
「…………おやすみ」
閉じかけたドアの隙間に差し込まれた手がそれを勢い良く開く。
身長は追い越せても力比べで壮史郎に勝ったことは未だない。
「行く場所はもう決めてある。薫、準備だ」
「ちょっ、勝手に入るなって!」
「朝ご飯も作ってきたんだ。梅のおにぎり、薫好きだろ?」
「作ってきたって……壮史郎料理出来ないのに?」
「馬鹿にするな、米ぐらい握れる」
ワンルームに置かれているローテーブルの前に座った壮史郎は、手にしていた袋をゴソゴソと漁る。
やれやれと隣に腰を降ろした僕に差し出されたのは、それはそれは大きいおにぎりだった。
「……朝からヘビーすぎない?」
「俺はいつもこのぐらい食べる」
受け取ったそれはずっしりと重く、だけど想像していたより綺麗な三角の形をしていた。
「形、綺麗だね」
「ふふ、そうだろう。沢山練習したからな」
得意げ笑った壮史郎は、早く食べろと僕を急かす。
ラップに包まれたそれに大口を開けて齧り付いた。
「…………」
「……どうだ?」
この米の詰まり加減……形整える事に注力して馬鹿力で握り込んだんだな……。
「だ、だめか……?」
まあ、でも……。
「ん、塩加減ちょうどいいよ。美味しい」
壮史郎なりに一生懸命作ってくれた事に変わりない。
ともだちにシェアしよう!