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幼馴染み_8
僕の言葉に安堵したのか壮史郎は彼らしい不器用な笑みを見せた。
壮史郎は面に出る感情の起伏が少ない。決して表情が無いわけではないけれど、人に比べて表情筋の動きが小さい。
本人も気にしていて努力はしているらしいけど……僕はこの不器用な笑い方も嫌いじゃないんだけどね。
それに面に出ない分、壮史郎の言葉は素直に気持ちを表してる。
真っ直ぐで、嘘偽りのない言葉。
「壮史郎は食べないの?」
「ああ、俺はもう食べてきたから。それ作るのに失敗した二個」
ニ個……このサイズを、ニ個……。
昔からよく食べるもんな壮史郎は。だけど身体付きに無駄はない。
筋トレなんてしてなさそうなのに一体どこに消えていくんだか。
おにぎりを頬張ってそんな事を思いながら、壮史郎の方を一瞥すると熱心な瞳が僕を映している。
「……な、何?」
「作ったものを食べてもらえるのが嬉しくて、つい。頑張って良かった」
そう言った壮史郎の手が微かに赤くなっている事に気が付いて僕はそれを取る。
「火傷したの?」
「た、炊きたてのご飯使ったら少し……」
「冷やした?痛む?」
「冷やしたし、痛みはない。少し赤くなっただけだ」
本当に真っ直ぐで不器用だと思う。
最後の一口を食べ終えて僕は立ち上がり、短めの少し硬い黒髪の頭の上で二、三度手を跳ねさせた。
「準備してくる。シャワー浴びるから少し待ってて」
恥ずかしそうに俯いた壮史郎からは「分かった」とか細い声。
本当はその顎を掬ってどんな顔しているのか暴いてしまいたいけれど、それは出来ない。
だって僕は、αだから。
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