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幼馴染み_10

「ぼーっとしてたけど、体調悪い?」 「あ、いや全然。考え事していただけだ」 「……そう?ならいいけど。待たせてごめん、準備出来たよ」 白のTシャツに薄手七分袖のグレーのジャケットを羽織った薫。とてもシンプルな服装だが、薫が着てるだけで様になる。 「格好いいな」 「そう?シンプルな服装だと思うけど……」 「薫が格好いいから何着ても似合う」 「…………ありがとう。壮史郎も今日の服似合ってるよ。珍しいね、バンドカラーのシャツなんて」 「デートだからな、オシャレしてきた」 胸を張って腕を広げて見せれば薫は笑って、また「似合ってるよ」と言葉をくれた。 「それで今日はどこに行くの?」 「植物園に行く。薫、花好きだろ?」 「花は好きだけど……植物園なんて近くにあったっけ?」 「少し遠いからドライブだ。ちゃんと車で来た」 入社してすぐにローンで買った白の軽自動車。 薫はあまり人混みが得意ではないから、出掛けるなら電車より車の方がいいだろうと、張り切って買った車だ。 その真意を薫に伝えたことはないけれど。 薫の背中を押し出すように外に出て、車に乗り込む。 シートベルトを確認して俺はアクセルを踏み込んだ。 「薫、眠たかったら寝てていい。着いたら起こす」 「……いや、道覚えたいから起きてるよ。帰りは僕に運転させて?」 「え!?か、薫が運転してくれるのか……?」 「壮史郎ばかりにさせるのは、やるせないからね。ああ、でも車使わせたくないとかなら止めておくよ」 そう言った薫に俺は全力で首を振った。 「そんなことない。薫が運転するところ見たい」 「そんなに期待するほどの事じゃ……」 「だって滅多に見られないだろう?」 「まあ、普段運転する機会なんて社用車ぐらいだからね」 「帰りにまで楽しみがあるなんて、今日は最高のデートだ」 走行中、前方に集中していた俺はその時薫がどんな表情をしていたのか分からなかった。だけど「そうだね」と呟かれた声音が驚くほど優しく耳に届いて、俺の心臓はまた静かに一つ鳴った。

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