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幼馴染み_11

「薫!早くこっちだ、薫の好きな黄色い花がある」 「分かった、分かったから。壮史郎、走ると危ないしちゃんと前見て」 俺は花に詳しくない。だけど薫が黄色い花を好きな事は知っている。 入園してから俺はひたすら黄色い花を目で追った。 「薫、薫!この花は?」 しゃがみ込んだ俺の隣に薫も同じようにしゃがみ込んで、俺が指差した花を覗く。その横顔は優しく綻んでいて、思わず見惚れた。 「パンジーだよ。可愛いよね、黄色いパンジー。僕結構好きで――って、壮史郎話聞いてる?」 「うん……聞いてる……」 「……僕じゃなくて花見なよ」 映っていた横顔はいつの間にか面と向かっていて、呆れ眼が見えた。 「花より薫を見てる方が楽しい」 「それじゃここに来た意味ないだろう?」 「意味ならある。楽しそうな薫が見れた」 「壮史郎……」 言いかけた薫の顔が途端何かに視界を遮られ見えなくなった。それは白く、ヒラヒラと舞って……。あまりの近さに正確には姿を捉えられないものの、独特な動きをするそれの正体に気付くまでほんの数秒。 俺は形振り構わず目の前の薫へと抱きついた。 「――わっ!?ちょ、壮史郎、いきなり危ないって」 「む、むむむむ虫!虫が!蝶が!」 「え……ああ、なるほど。壮史郎は相変わらず虫が苦手なんだね」 薫の言う通り、俺は昔から虫が苦手だ。 きっかけは何だったか……今となっては覚えていないけど、苦手なものは苦手だ。 「む、無理……嫌だ……怖い、虫怖い……」 「大丈夫だよ。ほら、もうどこか行っちゃった」 優しい声と頭を撫でられる感覚に恐る恐る目を開けて、周囲を見回す。 用心深く何度もキョロキョロと視線を張り巡らせて、ようやく肩の力を抜いた。 「ね?大丈夫だろう?」 頭上からの声に、上を見上げる。 まるで子供をあやすみたいな口振りだけど、頭を撫でられるのは悪くない。 「うん…………」 「蝶なんて害がなくて可愛いのに」 クスクス笑う薫を見ていたら、何かに気付いたようにハッとなって今度は気まずそうに俺を見下ろした。 「もう平気なら、見て回ろうか」 肩に掛かった薫の手が俺の身体を引き剥がして、順路の方へと足を向けて行ってしまう。 俺は離れ間際、耳に残った音に動けずにいた。 「……薫の心臓、ドキドキしてた」 今、絶対、俺と同じぐらい……心臓、鳴ってた。 「ま、待って、薫……!」

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