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幼馴染み_14

薫には緑茶を買って、俺は急いで来た道を戻った。 元の場所に居た薫はキョロキョロと辺りを見回していて、俺の姿を確認するや否や慌てて駆け寄って来てくれた。 「良かった。全然戻って来ないから迷子になったのかと思ったよ」 「迷子って…………もうそんな歳じゃない」 「電話しても出てくれないし、何かあったか……帰っちゃったのかなって心配した」 「……悪かった。飲み物悩んでただけだ。それに帰るわけないだろ、デートはまだ始まったばかりなんだから」 告げた言葉と一緒に差し出した緑茶。 薫はそれを一瞥して、はにかみながら手を伸ばした。 「ありがとう。…………ごめん」 「どうして謝る?別に薫は悪いことしてないだろ?」 「そう、だけど……その……」 薫は優しい。きっと今も俺を傷付けない言葉を探してる。 「……薫」 「?」 「さっきクレープの移動販売を見つけたんだ。俺はそれが食べたい」 「え……」 「何を謝ってるのか俺には分からないが、その気持ちがあるならクレープを奢ってくれ。それでチャラだ。だめか?」 提案に薫は眉尻を下げて少し思案した。 「……チョコバナナカスタード、アイス付き」 思案の末、薫から出てきたのはそんな言葉で。 「当たり?」 「……当たり」 「ふふ、変わらないね壮史郎は」 あ……やっと笑ってくれた……。 「か、カラースプレーも付けたい!」 「いいけど、あれって味する?」 「一応チョコだ。それにあったら何か気分が上がる」 「ふふ、何それ。じゃあ僕も付けてみようかな」 嬉しい。薫が笑ってくれた。楽しそうにしてくれてる。 だから嬉しい。 「行こう、薫。店、あっちにあったんだ」 「はいはい。危ないからちゃんと前見てね……あれ?」 先陣を切った俺の後ろで、薫は意外そうな声を上げた。何事かと振り返れば薫の視線は俺の手元。 「珍しいね、壮史郎が炭酸ジュース飲むなんて」 「あ……あー……まあ、たまには良いだろ。旨かったし」 別に隠す必要なんてないが見ず知らずの人間に貰ったなんて言ったら、「また壮史郎は」と小言が始まる気がして誤魔化した。 折角楽しい雰囲気になってきたんだ、壊したくない。 薫も納得してそれ以上の追及はなかった。だけど何となく後ろめたさが残ってしまった事は、少し後悔した。

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