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幼馴染み_15
トッピングのカラースプレーを意気揚々と頼んだら、店員のおじさんが増々でおまけしてくれた。もちろん薫のも。
「気前のいい人だった」
「ふふ、壮史郎嬉しそうだね」
「嬉しい。子供の頃から何かワクワクするんだ、このカラースプレー。薫はならないか?」
「うーん…………まあ、そうだね。楽しい気分にはなるかな」
「だろ?」
近くの空いていたベンチに腰掛け、俺達は並んでクレープに齧り付く。俺のはアイスもトッピングされたものだけど、薫のはシンプルなチョコバナナクリーム。
「…………旨いか?」
「ん?うん、けどちょっと甘いね」
お茶を片手に薫は笑った。
薫があまり甘い物が得意ではない事を知ってる。甘くない物を頼めばいいのに、薫はそうしない。
以前どうして好きじゃない物を食べるのかと訊いたら「壮史郎が食べてると美味しそうに見えるから」と言われた。
それ以来、薫が一緒に甘い物を食べてくれると堪らなく嬉しくなった。
「薫、一口」
「いいけど生クリームとカスタードの違いしかないよ?」
「いいから、あ」
開いた口元に寄せられたクレープへ齧り付くと、薫からは苦笑が溢れる。
「壮史郎の一口って大きいよね。特に甘いものの時。僕的には有り難いけど」
「…………」
これはちょっとした罪滅ぼし。昼は薫の好きなものにしよう。
「そうだ。さっき見たい花があったんだ。これ食べ終わったら見に行ってもいい?」
「もちろんだ」
「ああ、もうそんなに慌てて食べなくても……チョコ付いてても教えてあげないよ?」
「…………それは困る」
「じゃあゆっくり食べなね」
「分かった」
俺の返事を聞いて、薫の視線は花壇に向く。
その横顔を盗み見て俺の心臓はまたうるさく鳴った。
薫の心臓もさっきみたいに鳴っていればいいのに。
「…………壮史郎、見過ぎだってば」
「気にするな。薫は思う存分花壇を見てればいい」
「もう…………溢しても知らないから」
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