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第6話

5.  それから1週間。俺は静也にもう一度話しかけたかったけど、なかなかタイミングが掴めずにいた。相変わらず静也は冷たい空気みたいなものを周囲に纏っていて、話しかけるのが躊躇われたからだ。どうやらクラスの中でも浮いた存在らしく、時々休み時間、通りがかりに開いてる出入り口から中をさり気なく覗くと、独りぼっちで窓の外を眺めている静也がいた。周りはみんなグループで固まって、わいわいと賑やかに話している。そんな中、静也だけはただ一人、黙って座っていて、誰も話しかけようともしていなかった。  そもそも外部から入ってきた学生は孤立しがちだけれど、それでも1週間もすれば学校の生活にも慣れるし、それなりに上手く周りの生徒とやっていけるようになる。静也は多分、自ら進んで一人でいるのを選択しているのに違いない。そうでなければ、いつ見ても一人きりなんて状態にはならない筈だ。  俺は何となく放っておけなくて、休み時間になるや否や、覚悟を決め隣の教室に入って行った。 「……おい、静也」  窓の外を眺めていた静也は、ゆっくりと顔をこちらに向けると、眉を潜めた。 「またお前かよ」 「そうだよ」 「何の用?」  俺は迷惑がる静也を無視して、彼の前の空いている席に座った。 「何か用がないと来たらいけないのか?」  今日の俺はいつもと態度が違うからか、静也は少し怯んだように見えた。いつもは戸惑うばかりだったけど、今日は違う。俺はどうしても、静也と話がしたかった。どんなに拒否されたとしても、ここで諦めたらもうずっとこのままになると思ったからだ。 「……用がないなら、放っておいてよ」  ぷいっと静也は窓の方を向いてしまう。 「せっかくまた同じ学校になれたのに」 「同じ学校になれたから、何?」  静也はちらりと視線だけこちらに向けて言った。 「お、俺たち友達だと思ってたんだけど……」 「子供時代の話持ち出して、俺にどういう答えを求めてるわけ?」 「答えって……そんな難しいこと言われても全然分かんないよ」 「難しくもなんともないだろ? 俺がお前を友達だと思ってるのか、いないのか? この二択で言ったら、俺は後者だ。だけどお前が期待する答えは前者なんだろう? 残念だけど、お前の期待には答えられない」 「……そんな」 「話が終わったら、もう行けよ」 「……もう、友達にはなれないのか? 俺は、お前と友達に戻りたい」 「……要、全然変ってないな」 「変ってない……? 何が?」 「昔からそうだよね。……俺のこと、ちょっとでも気にしてくれたことあった?」  静也は噛みしめるようにそう言うと、悲しそうな表情を浮かべた。その後ろで次の授業が始まる予鈴が鳴っていた。

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