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第7話

6  住宅街の中にある公園。ブランコと砂場と遊具がいくつかあって、近所に住む子供達がよく集まっているところだ。小学校時代、放課後になると俺と静也は毎日のように、ここへやって来ては、ボールの蹴り合いをしたり、隠れん坊したり、追いかけっこしたりしていた。  この日も放課後、俺は静也を誘って公園に行った。俺は学校が終わると、家に走って帰ってランドセルを玄関に放り投げ、急いで静也を誘いに行く。彼は家の門の前でそわそわしながら待っていた。 「静也! 行こうぜ!」 「うん!」  俺たちは先を争うように走って公園へ駆けつける。そこで俺は見つけたのだ。 「静也! 今日はブランコ空いてるぞ! 早く、早く!」 「ほんとだ!」  ブランコはいつも人気だから、誰かが乗ってるけど、今日は2つとも空いてた。すっごいラッキーだ! と俺は嬉しくなる。 「どっちが高く漕げるか競争だぞ!」  俺は急いでブランコに乗ると、どこまで高く漕げるかチャレンジする。空に浮かんでいる雲に手が届きそうなぐらい、高く高く漕いでいく。 「静也、見ろよ! 俺こんなに高くまで漕げるんだぜ!」  ふと隣を見ると、ブランコに乗っていた筈の静也がいない。 「静也?」  キョロキョロと周りを探すと、少し離れた場所にある芝生にじっと座り込んでいる小柄な静也の姿を見つけた。俺は急いでブランコを飛び降りると、彼の元へ走り寄った。 「静也、せっかく俺がすっごい高くまでブランコ漕いでたのに、お前見てなかったのかよ」 「……ああ、ごめん」 「何してるんだ?」 「四つ葉のクローバーを探してるんだ」  静也はにっこり笑顔で答えた。 「四つ葉のクローバー?」 「うん。見つけたらラッキーなんだって」 「へえ……」 「ねえ、要も一緒に探してよ」 「何でそんなもん探してるの?」 「……え?」  静也は驚いた顔をした後、ちょっともじもじしてから答えた。 「おばあちゃんの具合があんまり良くないんだ……だから、四つ葉のクローバーが見つかったら、おばあちゃんの病気良くなるかもって……」  声は段々小さくなって、最後の方は聞こえなかった。俺は悲しそうな顔の静也を見てるうちに胸がもやもやして堪らなくなって、つい大声でこう言ってしまった。 「そんなことして女子みたいだな。そんなつまんないもん探すより、サッカーしようぜ」  俺は無理矢理静也を立たせて、その後サッカーをして遊んだ。  目覚ましの音が鳴っている。 ――あれ? ……夢、か。  静也に冷たい態度を取られたのが余程気になっていたのか、子供時代、仲良く遊んでいた頃の夢を見ていた。あの頃の俺たちはいつも一緒に遊んでいた。俺の横には静也がいて、あいつの隣には俺がいた。 ――なんで、友達に戻れないんだよ。  俺はふて腐れていた。  わざわざあいつの家を訪ねたり、隣の教室まで足を運んで、ここまでお願いしてるってのに、どうして一言うん、って答えてくれないんだろう。俺と友達に戻りたくない理由が何かあるんだろうか? ――全然思いつかねえよ。  ここまで徹底的に避けられる理由がまったく分からない。 「要、早く起きないと遅刻するわよ!」  階下から母さんの声がした。 ――くっそ、俺は諦めないぞ。  俺は勢いよくベッドから起き上がると、制服に着替え始めた。

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